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掬水へんろ館ウマヤドの自転車遍路1人旅《8月17日 - 15日目》
6時出発。
12キロ(50分)走って、五十二番・太山寺(たいさんじ)に。
松山の繁華街を走り、郊外を少し登る。ご詠歌のおっしゃる通り。
「ふとやまへ 登れば汗の出でけれど 後の世思えば 何の苦もなし」

2・5キロ(10分)走って、五十三番・円明寺(えんみょうじ)。
和気の町のこじんまりした寺だ。
うっかりして通り過ぎてしまった。
何気ない町の、何気ない寺で、何気ない朝を楽しむ。
次のお寺まで36キロか。

ルート196(今治街道)を瀬戸内海沿いに走る。
車でも、歩いても、この札所間が一番素晴らしいと本には書いてあったが、
自転車だとそうはいかない。
2車線で交通量は多いし、自転車が走る路肩はコンクリートが
削れて砂利混じりの悪路。
何度も、おっとっと状態になる。
途中、北条バイパスに入った時はほっとした。
再び、今治街道へ。菊間、大西を抜けて今治市。
初めてコンビニを見つけた。
暴走族遍路の雄二君を思い出す。
どこを走っているのか、またどこかで逢えるのか。

10時30分、五十四番・延命寺、到着。
「自転車遍路さん、何ぞ、お願かけて?」と、2人連れのおばさまに聞かれる。
まともな返事が出来ない。口ごもっていると、二人に合掌された。
ハンドルを握っていたので、深々と頭を下げた。

今治の町を散歩するような気分でゆっくり走った。
ここからは4キロごとにお寺がある。
五十五番・南光坊(なんこうぼう)、五十六番・泰山寺、
五十七番・栄福寺、五十八番・仙遊寺と続いている。
途中、氷を食べたり、スイカを食べたり、真夏の遍路を楽しんだ。

お寺は閑散としていて人がいない。
仙遊寺は仙人が遊んだ寺と言うだけあって、4キロ登りっぱなしの山の上にあった。
山門が新しい。瀬戸内海を背景に今治の町が一望できた。

五十九番・国分寺は遍路道だと6キロ、車道を行くと10キロ。
行きが上りなら、帰りは下り、4キロ快走して町に戻り、
156号線を真っ直ぐ、富田の踏切を越え、
2時40分、今日、77キロ走ったところに国分寺があった。
見た目は平凡な町中のお寺なのに、何か不思議な「氣」がある。
今まで気がつかなかっただけなのだろうか。
「氣」をキャッチボールするような感じになった。

196号を16キロ、国道11号を左折、1キロ走って小松町。
5時を過ぎていたので駅前のビジネス旅館「小松」に泊まることにした。

お盆やお祭りの時は別だけど、真夏の自転車遍路はほとんど予約なしで泊まれる。
雑貨屋の前の自販機にお金を入れて、店の人と話せばOK、
こちらの格好を見て安い遍路宿を教えてくれる。
今日は97キロ走った。
平均時速18キロ。総計1162キロ、59番まで来たのか。

駅前の食堂でカレーライスを食べた。
地図を広げて明日の検討をしていると、
地元の人たちが寄ってきて、いろいろ教えてくれた。
明日は難所の1つ、海抜750メートル、61番・横峰寺(よこみねじ)がある。
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