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掬水へんろ館のらくら遍路日記〜土佐・修行道場篇(序)
北村 香織
第1日
7月13日(火) 薄曇り/細かい雨

前回同様、大阪から高速バスで徳島へ。今回は便数の多い梅田・三番街から乗車。平日なのにもかかわらず乗車率は高いが、切符は買えた。8:40 梅田発。発車後じきに記憶が無い。気がつくと、またも鳴門大橋手前だった。我ながら呆れる…。

11:10 徳島駅着。時間がたっぷりあるので、ランチ後、地下をうろちょろする。

12:23 牟岐行き発車。

13:50 新野駅着。

今回のスタートはここ。前回は22番から23番まで時間の関係で電車を使ってしまったので。待合室で変ー身!おへんろさん〜〜〜♪

日和佐までの距離は約20km。そこまでとは思っていなかったのでギョッとなる。季節柄、雨量の多いのを予想して、今回は靴と合羽を新調した。どちらもmont‐bellのゴアテックス。学費に四苦八苦の超ビンボーな私にとって決してお安い買い物ではなかったが、爪先幅広の絶対条件の上に蒸れ・浸水の心配が無いというのは実質的にかなり安い。土佐への道はアスファルトの国道が多いので、登山靴というのは迷ったが、やっぱり貧乏性ゆえ一石二鳥には勝てなかった。。。

しかし、履き慣らす間もなく来てしまったので、しばらく歩くとくるぶしから足首にかけて擦れて痛み出した。さらに行くと国道55号線は工事が多く、埃か何かが入ったのか左目がチカチカ痛む。コンタクトレンズを入れているので、この状況は耐え難い。しばらく我慢して歩いていると道脇に湧水があって、手洗い場のようにしてあったので、そこで目を洗う。でも取れない。

本当は予定では3日前に出発し、少なくとも高知市内までは行くつもりだった。なのに、調査用紙の準備が遅れに遅れて、気が削がれたような形でこの日四国入り。最初から気分が乗らないまま来てしまったので、最高に体が重い。荷物だけは厳選して前回よりは軽くしたが、調査用紙40通が2kgある。お遍路さんを見つけたら即1通ずつ渡すはずが、時期的に難しいのか見当たらない。車だけはひっきりなしに通過していくけれども、民家も離れているので犬猫にも会えず、工事関係者以外誰も歩いている人はおらず、黙々とひとり歩くのみ。むわんむわんの湿気の中、歩くのがこんなに辛かったか?と思った。思わず知らず(誰か乗せてってくれへんかな〜)とか考えていた。うつむき加減に歩いていると、目に入るものはカラスを始め、あらゆる?種類の昆虫たちの死骸。巨大ミミズ、小ミミズ、蝶、蟹、カナブン、クワガタ、トンボ…。干からびてカラカラになった上をアリさんたちが行き来する。何のために彼らはここでこんな姿でいるんだろう? 生きるって何、死ぬって何…? 種を存続させてアリさんの餌になって、土へ還るためだけに? 私は「どんなに小さなことでも、そこに意味の無いことは絶対にない」という考え方を強固に持って生きている人間なのに、この時ばかりはこの考え方が揺らいだように確信が持てず、ますます気分は盛り下がり、本当につらかった。

国道55号線、新野〜日和佐間にはトンネルがたくさんありました。最初のトンネルで自分の影が三重になって映り、本気でビビりました。行の途中に魔が心の隙をついてくるって比叡山の修行僧が何かの本で言っていたけど、それが本当に身にしみた。それにしてもトンネルを歩くのって怖い。排気ガスも苦しいし。

18:20 日和佐着。もうへ〜ろへろ。

19:30 前回に同じく千羽温泉に入りに行く。シャンプー、リンスがなくなっていた。

時々こういう所があるので、試供品や旅行用の袋入りのがあれば、幾つか持ってくる方が無難かも。

とある人からとある禅寺を紹介された。俗世にまみれた八十八ヶ所より、そっちに行きなさいと。ちょうど先月ゼミで発表した後、ある先生から体を使うという意味で歩くのと対極にある座る、つまり坐禅と比較してみてはどうかとコメントを受けていたので、これはタイムリーなお話と思い、とにかく翌日行ってみようと思う。そこから先はなるようになるさ〜。これぞ旅の醍醐味ってヤツで、私のふらふら癖が抜けないのはこれがあるから。

今日1日の気の重さも忘れて、にわかにワクワクし始めた現金なお遍路さんであった…。

本日の歩行距離: 20km
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