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![]() | のらくら遍路日記〜阿波・発心道場篇 | |
北村 香織 |
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| 3月19日(金)///大雨予報がはずれ、曇り |
9:00UP。ホテルを出たら雨が上がって急遽カッパを脱ぐ。今朝は起きるのがしんどくて、つらつら夢もいっぱい見た。足のむくみは完全に引いた訳ではないが、なんとか回復。カメラ屋のおばちゃんが窓を拭いている姿が見え、向こうさんが気付いていなかったようなので、心の中でご挨拶と感謝の言葉と決意とを述べて歩きだす。
11:00 18番 恩山寺 着。 着いた途端雨が降り出す。カッパを着て、大師堂で寝ている犬を撮る。こんな風にお寺で完全にくつろぐ犬の姿をよく見かけるので不思議な気持ちがする。お大師さまが犬を大事にしたことを受けて今でも土地の人が大事にされているためなのか、それとも犬の方もお寺の雰囲気に惹かれてくつろげるのか。13番のお寺で寝転んでいた白い犬は、お遍路さんの読経にじーっと耳を澄ませて、まるでうっとりと聞き入っているかのようだった。
12:15 19番 立江寺 着。 同じ旅館に泊まる予定の人がチェックインは4時からだと教えてくれ、暇つぶし兼休憩に座る場所を探すが、小雨は降るしお寺は諦め、近くのJRの駅へ行く。期待はしていなかったが、案の定ローカルすぎるほどの駅だった。でも雨露はしのげるしお昼にして必殺・ぼけーっ作戦でいく予定が、電車から降りてきたおばあちゃんと話し込んでしまうことに。このおばあちゃん、それはそれはたくさんお喋りをしてくださって、とにかく八十八箇所を半分しか回れず、身体の具合で断念してしまったのが未だに心残りでならないということだった。あとはお嫁さんに怒られてばかりという内容だったが、このお嫁さんはおばあちゃんがもし側にいなくなったら、きっと(両価的な意味で)寂しく思うのではなかろうかという気がして、おばあちゃんにはそう言った。
業が深いとか頭が病気とかご自身ではおっしゃっていたけど、私は1時間以上もお話していてそんなふうには微塵も感じなかった。コニゅのこともちらっとだけ話して思わずまた泣きかけたけど、その時のおばあちゃんの眼が印象に残っている。次の札所ではおばあちゃんがまた残りのお遍路さんに出られるようになることを祈願しようと決めた。
おばあちゃんが行ってしまうのと入れ違いに、若い男の子がでっかいザックを下げてやってきた。聞けば、あまりの辛さにここから先は電車で行くつもりだと言う。アンケートをお願いして電車が来るまで雑談。
16:40 旅館金子や着。やはりザックが少しでも軽くなったのは大きかった。でもそれまでの暖かさが嘘のように空気が冷たい。今日は足よりまず両の掌がパンパンにむくむという現象が起こる。むくみが出たら10分きっかり休憩することでなんとか歩いた。早速お風呂であったまる。食後に福岡の女住職さんにお話を伺う。飄々とした方で、竹を割ったような印象のひと。日常生活の方がよっぽどしんどい、と語って下さる。世界中旅して回った経験をお持ちで、旅することによって生活の上での必要なもの、そうでないものが良く分かったという。僧侶でいらっしゃるのできっと普通より簡素な生活を心掛けておられるだろうに、まだまだ切れるものはあるとのこと。旅は時間的にも空間的にも非日常であり、ちょうど心理療法の世界のように日常からの逃避、自我防衛の働きがあって、そこで癒される。それこそが人が旅をする意味ではないかと密かに考えていたけれど、この女住職さんは信仰や宗教、旅といったもの(非日常)は日常生活あってのことだとおっしゃった。そこのところは抜けていたのでなるほどー!と思った。
そろそろ寝ようかと思った矢先、持病(といえるのだろうか?)の腰痛がピキーッと走る。
半ば癖になっているギックリ腰もどき。明日は遍路中第2、第3の難所が連続して待ち構えているというのに。朝までの回復を祈りながら早々に横になる。
本日の歩行距離: 23.9km
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