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掬水へんろ館のらくら遍路日記〜阿波・発心道場篇
北村 香織
第4日
3月17日(水)///晴れ

8:30 UP。清算時に7350円と言われぎょっとする。予約した時は2食付き6000円って聞いたと思ったのに…。細かいのがないと万札を出したら350円まけてくれた。

今日はひたすら車道遍路なので、アスファルトが膝と足首に響く。淡々とのどかな風景が続くばかりで距離も位置も分からず、気分的にしんどい。肉体的にも、鼻水が止めどもなくあふれてきて、普通に歩く3倍くらい辛い。徳島市に突入したところで休憩。一本杉でお接待にいただいた桃色ウェハースサンドのパンをいただく。これは幼稚園や小学校の低学年頃によく食べたパンで、なつかしさでいっぱいになる。4/5ほど食べたところでふと袋を見ると、なんと賞味期限が3/9、もう1週間近く経っている。でも全然ヘンな匂いも味もしなかったから大丈夫! 思わず笑いがこぼれる。 昨日のおじいに刺激されたか道中に一句。ひとり問答歌のつもりが問いの一句でギブUP。

『春遍路 何をもとめて のらくらり』

12:30 13番 大日寺 着。 距離的にこのすぐ隣の旅館に予約を取っていたが、あまりに早く着きすぎたので、しばしぼーっとする。薄汚れてはいるけれど首輪をしている白い犬がしんどそうにやってきて、日当たりの良い本堂前の玉砂利にさも我が場所、というように長々と寝そべった。近くに行くと目だけ上げて(なんや、邪魔せんといてくれや)という様子だったので、また向かいのベンチに戻ってじーっと見ていると、やがてむっくり起き上がり、私のところにやって来た。ザックの脇に座り、私の手を嗅いだりしていたが、そのうちまた大儀そうに立って元来た方にゆっくり歩き去っていった。コニゅの遺骨を一緒につれて四国入りしているせいか、やたら犬と接することの多い道中である。初日から何匹かひとりで散歩している犬と遊んだりした。この辺では放し飼いがまだ一般的に普通みたい。最近めっきり田畑の減った山口の実家のまわりや、田畑はあるけど人家と車の密集した奈良の現宅付近を思い浮かべて、ここは私にとっては懐かしく犬にとっては有難い環境だな〜と思う。先を行くべきか考えるが、体調がさらに悪化しそうな予感もして、このまま今日は無理しないことにする。折角だからフル装備のお遍路さんを写真に収めさせてもらい、荷物だけでも置かせてもらえるよう頼むつもりで旅館に行ってみる。が、ブザーが鳴っても声をかけても誰も出てこない。奥でTVの音がするし、電話をとって話す気配もしっかり伝わってくる上、私の前方にカメラが取り付けられているにもかかわらず、うんともすんとも言わないのでしかたなく向かいに一宮城址と一宮神社というのがあったので行って時間をつぶすことに。一宮城は小高い丘というのか山というのか、とにかく10分ぐらい林の中を登るとそのてっぺんに石垣が残されていた。狭いながらも公園としてベンチなどが備えてあったので、吉野川を眼下に木造のベンチの上でお昼寝。お陽さまの熱をふっくら内部に蓄えたベンチがあったかくて気持ちよかった。しかしだんだん陽が陰って、寒くなってきたので、山を下りまだ早めではあるが旅館の戸を叩く。今度は応対してくれ、離れの合宿部屋のようなところへ案内された。洗濯機がタダだったのは有難かったけど、少〜しなんだか一般のツアー遍路の人々から隔離されたような雰囲気を感じた。洗濯の間ゾクゾクしてきたので勝手に布団を敷いてもぐりこみ、TVを聞きながらうつらうつらする。と、安室奈美恵のお母さんが殺害された、というニュースに目が覚める。驚いた。

洗濯物を部屋に干し、食事の連絡が来るまでまたうとうと。夕食時に隣に座ったおじいさんと世間話して風邪薬を恵んでもらう。お風呂は離れの狭いのより本館の方が大きくていいだろうと思ったが、負けずに狭い上に団体のおばちゃん達が入ってきて押しやられてしまった。顔も洗えずそそくさと出て、薬飲んで就寝。ちょっと悲惨な1日だった…。

本日の歩行距離: 20.1km + 城跡往復3km
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