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掬水へんろ館のらくら遍路日記〜阿波・発心道場篇
北村 香織
第1日
3月14日(日)///晴れ

目が覚めたら窓の外はもう鳴門大橋の手前だった。鳴門撫養到着のアナウンスに下車支度。駅前かどこかに停車するのかと思っていたら、高速道路脇のバス停で降ろされた。フェンスに描かれた地図にしたがって鳴門駅までさっそく歩く。およそ2kmほどで9:30 鳴門駅到着。9:52発の電車で池谷乗換え、10:15板東着。鳴門から付近にバックパックに袋に包んだ杖らしきものを持っている青年がいるのに気付いてはいたものの、声をかけるきっかけがつかめないでいたが、池谷で下車するときに彼のザックが手動式の扉に挟まったのをヘルプしてあげたのと、ここで乗り換えた乗客が私たち2人だけだったのとで自然に話が始まった。やはり彼はお遍路さん目的だったが、私と同じくまったくの初心者で、情報についても私同様、とにかく1番さんに行けばなんとかなるだろう…というニュージーランド帰りのプー太郎くんであった。

板東の駅前は、拍子抜けするほどのローカルな佇まいで、タクシーの営業所と商店1軒以外に一番札所への地図ひとつ見当たらない。商店で道を聞いて、1kmほど古い路地を歩く。

10:30 一番 霊山寺 着。大型バスなどの帰着も頻繁で、白装束の人々で賑わっており、いよいよ来たーという実感が半分と残りは(なんじゃ、普通の観光地と変わらんやんけ)という思い。ここでお遍路用品と地図を揃える。

NL帰りのプー太郎くんとはここでお別れ。しっかり卒論アンケート用紙を託す。

※ お遍路用品はまともに一式揃えると1万円はくだらないと思われます。とてもそんな支出では1週間持たないので、私は上衣と衣紋掛け、それと納経帳だけにしました。それで7000円ちょっと也。本来だとこれに杖、鈴、笠、脚伴、納め札(実は最後の最後に購入、100円)と、納経用に掛け軸、上衣等があります。地図は"へんろみち保存協会"発行の冊子・2冊組、¥3500。予想以上に札所案内がないため、やむなく購入。別冊の方がへんろみちの詳細や目印、宿の情報を網羅。道に目印のシールや石碑もあるので無理に買う必要はないかもしれないが、完全に歩き遍路で行くならあった方がいいかも。私の印象では6:4であってよかった、かな? ただし事前に取り寄せて、お遍路さん自体にはこの別冊のみ携行(必要個所のみをコピーしてくるベテランさんもいた)をおすすめ。本篇は準備や巡拝の方法等の案内・解説です。

11:20 2番 極楽寺 着。 花の香りが漂ってき、春を実感。ひと気ないのもまたのどか。しかし暑い! 四国だから???

12:05 3番 金泉寺 着。 10分休憩。ちょっと曇ってきた。
12:15 出発。 歩きながらリンゴをかじってお昼ご飯。

ツラかった…。車道へんろに来てしまったらしく大回り。行けども行けども標示が4kmで以後標識に不信感。自転車の小学生が挨拶してくれる。道路脇に住むおじいちゃんが玄関先にザックを置かせて下さり大助かり。

13:50 4番 大日寺 着。
14:10 5番 地蔵寺 着。 納経の際いただける御本尊の姿札1〜4番までのを全部失くしたことに気がつく。罰当たりな!しかしショック〜。

14:35 6番 安楽寺 着。どこまで行けるかわからなかったので宿の予約はしなかったが、ここと次の7番のお寺が宿坊になっているので試しに聞いてみる。以後どこの宿でもかならず午前中に予約をするようお説教はされたけど、泊めていただけるとのこと。後にほかのお遍路さんたちに聞いたところでは、かなりラッキーだった様子。きつく断られたり、追い払われたに近い人も中にはいた。

本日の歩行距離:17.5km

* この宿坊で出会った個人お遍路さん達といっしょにお食事をして、綜芸種智院大学の『社長兼学生』さん&博識の1回生コンビにお酒をごちそうになりながら話を聞かせてもらった。(という訳で夕食後のお勤めをサボってしまった) 足・肩は痛いけど充実感。4番への道は長くきつかった分、コニゅのことを我知らず思っていて涙が流れたりもしたが、挨拶してくれた小学生や、ザックを置かせてくれたおじいちゃんなど土地の人の暖かさがこころに沁みた。5番への道すがら、信号を渡っていると左折車が待ってくれていたので小走りすると、ドライバーの女の人が深々と頭を下げてくれてビックリ、その拍子に涙があふれてきて驚いた。何だろう、この気持ち。ただのやさしさとは違う、もっと深くもっと大きな、人間が本来持っているはずのもの_______。それは宗教を超えた、というより、そもそも宗教の源にもなった敬虔さなのかもしれない。

* 大酒食らったのにもかかわらず寝付かれず、寝てはいるのにまるでそんな気がしない妙な気分。障子の外で猫のものすごい鳴き声と、何か碁を打つようなパシッという音が一晩中響いてきて気になる。今でも謎のあの碁の音、いったい何だったのー?

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