掬水へんろ館目次前日翌日著者紹介
掬水へんろ館のらくら遍路日記〜土佐・修行道場篇 (本篇U)
北村 香織
第8日
3月23日(金)晴れ

6:00起床。7時に発とうとしたら「コーヒー飲んでいき」と言われ、お言葉に甘える。インスタントだけれど、朝の1杯は本当においしい。おしゃべりとコーヒーについペースが狂って、あやうくお金を払うのを忘れるところだった。7:15 UP。ほのぼのとした思いに足取りも軽く以布利の集落を下る。漁港の脇を抜け、海べりに張り出した道を行こうとした時に後ろから呼び止められた。土地の人かと思って挨拶したら、なんと民宿星空のおじさんだった。炊き込みご飯を炊いたから、とわざわざおにぎりにして追いかけて下さったのだ。びっくり仰天して、ただただ恐縮していただく以外に能のない私。ほかほかのおにぎりの熱が袋を通して手に頬に伝わり、おじさんの気持ちが心に伝わって、涙がまた止まらない。アツアツを1ついただいたら、身までもあったまってしまった。

元気百倍で歩き出す。半島にとりついてから、椿の大木や他の木々も鬱蒼としてはいるが、どこか南国らしい光と生命の息吹みたいなものを感じる。以前に見た「原始の海の夢」(大切にしている夢のひとつ)を思い出した。風景がどこかかぶるような気がする…。津呂を越えてから足摺までは単調でしんどかった。でもまたひとりになって、これまでの色々な方々との出会いを振り返るよい時間をもらったような気がする。

ずっと続いた林道に、ふいに展望台の標示。分からないまま行ってみると、いつのまにか椿のトンネルが頭上を囲み、ひょっと視界が開けた。展望台、トイレなどが整備され、実に明るい感じの観光地。20年前に来た時は、子ども心ながらちょっと凄さを感じたので、拍子抜けな感も。展望台には中学生の歩き遍路くんがいて、驚いた。足摺岬灯台や足摺七不思議のいくつかをまわり、11:20 38番金剛福寺着。予想以上に由緒正しきお寺。本堂脇で犬のシロちゃんがお昼寝。11:55 UP。白山洞門へ行ってみる。すごい。洞門の中に入ってみたかったが、失礼な気もしてやめた。横の石ころ浜で昼食。朝いただいたおにぎり。お魚が炊き込んであって、冷えてもおいしい。

お不動さんが話して下さった石笛なるものを探してみる。石灰みたいな柔らかい石に穴が通っているのを見つけた。吹いてみるも鳴らない。しばらく探してみたが駄目だった。私はお不動さんみたいな徳をまだ何も積んでいないからな…。今回お念珠をいただけただけで充分なはず。きっと今の私は、この石のような器だということなんだろう。いつかその日が来たときに比較しようーっと、と思って最初に見つけた鳴らない石を拾った。

14:10ペンションつりの里着。早すぎるので荷物だけ置かせてもらい、臼碆の竜宮神社へ行ってみる。参道を降りていくと崖になっていて、そこから整備された階段が更に続き、こんもりと凸型に突き出た岩の上に小さなお社が、果てしない太平洋に向かって鎮座しているのが眼下に見える。どこか畏れ多くて、そこから姿を眺めるだけでいいように思えた。

戻って、少し先から今度は灯台に行ってみる。灯台があるなんて知らなかった。フリークの私としては嬉しい限り。 足摺岬灯台とは大きさも知名度も比べものにならないけど、誰もいないこの場所は、左下に竜宮神社、前は黒潮という贅沢なところ。一目で気に入って、しばし眺めを楽しんだ。(でも崖の下はすごい岩場)わざわざ行った甲斐、大あり。

15:40 ペンション着。古い釣宿と思いきや、ユーティリティも造りも新しいペンションだった。お風呂も男湯と女湯と2つあり、めちゃきれい。旦那さんと息子さんはずっと野球の練習をしていて、将来の夢はイチローとチチロー? 明日はいよいよフェリーで帰る。港に朝10時半頃に行かないといけないので、発つ時間が気になる。結局6時に朝ご飯をいただいて7時頃に出る予定に決め、早々と就寝。

本日の歩行距離: 24.5km(23629歩)
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