掬水へんろ館談話室
掬水へんろ館遍路トピックス [99.4.24]
週刊AERA「四国青春遍路」
by くしまひろし

    週刊「AERA」(朝日新聞社)1999.4.19号P.34〜p.38に、「四国青春遍路 霊場巡りをする若者たち」という、写真中心の記事が掲載されています。(4月12日発売であり、現時点では、残念ながら店頭にはありません。)

      知能情報工学を専攻するHさん(19歳、男性)は「十代のうちに、達成感とか、自分の中で納得できるものが欲しい」と思っていたところ、テレビで見た四国遍路に「これだ! と思った」という。春休みと夏休みで、歩いて回りきろうと思っている。

      同じく大学生のMさん(19歳、男性)は、野球とともにあった高校時代を清算するために歩いている。「耐える時期だった」3年間を終わって大学に入り、急に目標を失った息子を見て、母親が四国遍路を勧めた。今回は約半分の600キロを歩く。

      自転車で遍路をしているのは、就職を前にした大学院生のSさん(24歳、男性)。昨年6月に就職が決まってから、「このままサラリーマンになっていいのか?」と疑問が湧いてきた。仏教関係の本で空海に興味をもった。自転車遍路では「すべての判断を自分で下しているのが心地よい」。

      Tさん(21歳、女性)は看護学生。「医療的な処置よりも、患者さんとの関わりを一番大切にしたい」と考えて、4月からの就職先は精神病院を選んだ。幼稚園のころから看護婦になるのが夢だったはずなのに、今になって迷いが出てきて行動を起こした。電車やバスも利用するが、できる限り歩いて巡拝する。

      今春高校を卒業したばかりのTさん(18歳、男性)が遍路道を歩くのは、就職先の寿司屋の社長の命令で「厳しい修行に備えて根性を付ける」ためだ。「俺はお遍路さんとは違う」という彼は、紺色のパーカーにブラックジーンズという普通の青年のスタイル。金剛杖も持たない。だが、「車やロープウェーを使うことは自分に対する裏切りのような気がする」という。

    就職や進学といった人生の岐路の直前・直後に際して、一度立ち止まった若者たちの姿が見えてきます。空海に対する関心が動機になった人もいますが、全体的に宗教的な色合いはほとんど見られません。最後のTさんなど、伝統的な遍路像から最も遠い印象を受けます。それでも、この記事の著者であるフォトジャーナリスト吉川秀樹さんは、彼について「足をひきずりながら黙々と歩く姿は、やはり修行者を思わせる」と評しています。


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