掬水へんろ館談話室
掬水へんろ館メールボックスから

逆打ち区切り2回目を歩かれた歩修さんからのメールです。台風被害の状況など、これから歩く方の参考になるでしょう。

2004.12.10 歩修さんからのメール

<巡拝コース>実質8.5日間で350kmの歩き遍路。

(1)コース・スケジュール

  • 11月28日:75番善通寺〜68番神恵寺(歩き27.8Km)<藤川旅館泊>
  • 11月29日:67番善通寺〜65番三角寺(歩き41.7Km)<BHろんどん荘泊>
  • 11月30日:64番神前寺〜61番香園寺(歩き46.9Km)<B旅館小松泊>
  • 12月1日:60番横峰寺〜59番国分寺 (歩き41.1Km)<Hコスモオサム泊>
  • 12月2日:58番仙遊寺〜54番延命寺 (歩き39.8Km)<北条水軍YH泊>
  • 12月3日:53番円明寺〜46番浄瑠璃寺(歩き36.5Km)<長珍屋泊>
  • 12月4日:45番岩屋寺〜44番大宝寺 (歩き35.6Km)<民宿:笛ケ滝泊>
  • 12月5日:鴇田峠越え(別格:十夜ケ橋) (歩き46.6Km)<寿旅館泊>
  • 12月6日:43番明石寺〜41番龍光寺 (歩き34.2Km) 帰路大阪へ

(2)12月での歩き遍路する人達

逆打ちですから順打ち歩き遍路される状況・情報をキャッチできます。

  • 歩き遍路される人数は6〜7名/日ほどであった。
  • 年齢層では中高年(50〜60歳代),若年(20〜30歳代)に2分される。
  • 性別は中高年では男性が圧倒的に多い(女性3名)。若年では男性・女性が半々。
  • 中高年では夫婦ずれを数組見かけた。
  • 若年の女性の一人歩き遍路を多く(10名近く)見かけたので驚く。
  • 初心者がやはり圧倒的でした。(行き交う遍路・宿での会話から)
  • 会話から初心者で年齢層・性別を問わず,以外と通しされる遍路がいることを知る。

(3)12月でのツアーバス遍路(先達案内の専用含む)・自家用車等で遍路する人達

  • 遍路道・札所・宿泊先での状況や聞き込み情報からシーズンに比べ極端に少ない。
  • ツアーバス遍路団体を札所で時折,一組見かける程度。
  • 長珍屋泊りでは歩き遍路4名と車・タクシー利用の女性組3名の7名でした。
    (過去2回泊り,大食堂は賑やかで大勢(200名ほど)いたのが様変わり)
  • 別格寺院を4寺巡拝したが,文殊院で別格20ケ寺ツアー専用バス団体を見かける。
    (文殊院では納経所の女性が両手に朱印を持ち立姿で押印する場面を見て驚いた。)
    (今や別格回りも人気が出始めたのか,別格巡拝ツアーが組まれていることを知る。)

(4)歩き遍路の服装・身支度

    談話室で議論されていましたが,私は5年前の歩き遍路始めた当初からいろいろと情報を仕入れ,先ずは姿形から遍路になるのが望ましいと考えました。従って白衣・金剛杖・菅笠・輪袈裟・数珠・頭陀袋等を取り揃え今も着用しています。
    へんろみち保存協力会では形は心をつくる。形を整えると心までひき締まるのも事実であると記しています。遍路に旅立ち心に感じるものが芽生え,形を整える事を知る・気になると順次取り揃えるものではないかと考えます。
    私は他人に遍路姿はこうあるべきと形式を押し付ける気は有りません。
    また,過去より時代と共に移り代りしてきた経緯をみると厳しく拘るものでもない。
    (参考:昭和初期の遍路姿の写真では着物で三度笠を被っていました。)

  • 今回の逆打ち巡拝で観察・チエックした限りでは,7〜8割ほどが白衣姿でした。
  • 特に女性遍路はほとんどが白衣姿でした。
  • 中高年の男性の遍路に白衣ではない,自前のスタイルが目立って多い。
  • 若年層では男性・女性を問わず白衣姿が初々しく印象的でした。

(5)第60番横峰寺への歩き遍路道

    現在,歩き遍路道は第61番香園寺から奥の院経由ルートと第59番国分寺から大頭・湯浪ルートは共に台風による路面崩壊で通行不能となっております。唯一,第63番吉祥寺の近くから車道を行き,温泉旅館京屋支店経由で車道を歩く道が横峰寺に巡拝するルートになっています。(なお仮礼拝所が別院にあり)私は遍路道に拘るタイプで余程の生命に重大且つ危険を伴う場合を除いて,慎重で冷静なる判断による行動で強行する計画でした。過去4回の貴重な経験と多少とも日頃から鍛えている体力・登山経験・知識・有事での対応等を踏まえて,自己責任の元で対応する。但し,最悪の場合は潔く中止する決断も持ち合わせていました。来春の通行回復を待つことも当然ながら視野に入れていました。
    其の為には現地での新しい情報や現に横峰寺へ通行不能に拘わらず歩かれた遍路の方々から,崩壊情報や特に通行上の注意点・ポイント等の情報収集を試み判断材料にするべく積極的に努めました。
    第66番雲辺寺を下り第65番三角寺に向かう頃から,2日間で10名余の順打ち されてお会いする歩き遍路の方々から貴重な情報・体験談をお聞きしました。

  • 敢えて挑んだ遍路の方々は一様にお薦めできないとまず前置きして説明された。
  • ほぼ半数近くが大頭・湯浪ルートを通り,奥の院経由または車道から下山。
  • 残り半数は情報伝達されている第63番吉祥寺からの車道ルートを利用。
  • 通行不能を敢えて挑んだ遍路(中高年男性・中高年夫婦・若年男性・若年女性)のほとんどが一巡目で,通行不能の情報入手」不足・乃至は崩落の細かな状況を知る事なく強行されていると会話する中で受け取りました。私から見れば無知で慎重さを欠き,やや無謀な行動であると直感しました。反面,私には出来ると確信したのも事実です。
    (保存協力会の地図編は持参されており,歩き遍路道の予備はされている。)
へんろ道を強行されたお遍路さんの話の内容・ポイントは次の通り。
  • 沢をまたぐ遍路道が崩壊している。沢に下りさらに上流<登り>を目指すこと。
  • 雨の時は中止すること。(崩落した急傾斜のある所,また橋の流失で増水時に危険)
  • 崩落場所で遍路道を見失い,山側に迷い込んで一時混乱した(若年男性)。
  • 既に歩かれた方の踏まれた足跡,急場の俄か道が出来ている所を見つけ通ること。
  • 崩壊場所は奥の院経由ルート,大頭・湯浪ルートも共に登り口を少し行った渓流<沢>下部の場所が大きく崩壊して難所。遍路道を見失うと共に危険である。
    (当然,増水した雨水が上流から下流に勢いよく一気に流れ込み,崩壊したことによる。)
  • 横峰寺の方から奥の院への下りは通行不能で危険とお聞きして,薦められた車道経由して吉祥寺方面に下りてきた。(中高年男性)
崩壊現場の状況説明と遍路道の通行上の注意点・要点について

    (注)あくまで自己責任・自覚の行動であること。距離は道標乃至は目測です。

    ◎大頭・湯浪ルート<四国の道,休憩所,便所の有る所から横峰寺まで1.6Km>

  • 石段の登り口にはトラロープがしてあり,通行不能と表示されています。
  • 300mほど登ったところの橋<約3m>が流失。水の流れは無いので一旦は川底の岩に下り前方に向かう。左側は落差ある沢で落ち込んでいるので慎重に通過すること。雨の時は水流と滑りに要注意。
  • 600mほど登ったところから,約200mの長さで渓流<沢>が大崩壊。
     この付近はジグザグに何度も繰り返して沢をまたぎながら,登りつめて行く遍路道がある場所です。上流から押し流された流木・倒木・岩・土石・枝葉等が折重なり,当時の凄さを目の当たりにする崩壊現場です。従い,遍路道が崩壊して無く行く手が不明で迷い悩みます。水流は無いが流木・倒木・岩・土石を踏み越え,潜り,時には山側斜面を辿る危険が伴う沢登りを強要されます。
     通行する上でまず重要なことは,沢をジグザグに何度も繰り返してまたぎながら,登りつめて行く遍路道が有った場所をイメージして下さい。決壊している沢,また左右の山側には何らかの手がかりとなる物<石組み道・階段,手摺り,へんろ札,案内テープ等>が残骸として必ず有ります。
     まずは,行く手前方の手がかりとなる物を発見して下さい。そこに危険を避け無難なルートを選んで辿り着くことです。辿り着けば,また前方を見れば沢か左右の山側に手がかりとなる物が有ります。その手がかりとなる場所まで慎重に登って辿り着いて下さい。この連続を数回繰返せば約200mの崩壊現場を脱出することができます。時間はかかりますが,多少は冷静になり大きく迷う事は無い。また,既に歩かれた方々の踏まれた足跡,急場の俄か道が出来ている所を見つけ通るとなお安心です。
  • 約1000m登った場所に松5本の倒木が遍路道を塞いでいます。また谷側が 崩壊して道がえぐられています。倒木をまたぎ・潜りして,軸足を山側に置き慎重に通過して下さい。
    (私は逆打ちですので横峰寺より約50分で下りました。地元の方1名に合う)

    ◎奥の院ルート<横峰寺から登り口・舗装道路含め奥の院まで7.6Km>

  • 渓流<沢>下部で崩壊している。(大頭・湯浪と同様の状態)その場所までに5ケ所で遍路道が谷側で崩落してえぐられ幅が狭くなっています。必ず軸足を山側に置き(重心の位置),慎重に注意を払いながら通過して下さい。
  • 2.3km下った場所に松の倒木あり。潜って通過。えぐれた狭い道を行く。
  • 5.7km下った場所に松10数本が谷側に向けて折重なって倒木状態。
    四つん這いにながら潜る。遍路道も一部で壊れているが注意して通過。
  • 6.7km下った場所で約100mの長さで崩壊(登り口を上がって100m)
    上流から押し流された流木・倒木・岩・土石・枝葉等が折重なっています。
    従い,遍路道が崩壊して無く行く手が不明で迷い悩みます。遍路道は沢に沿って有りました。大頭・湯浪と違って,手がかりの物は有りません。兎にも角にも沢を一直線に下ることです。危険なルートを避け,倒木を乗り越え・潜り,時に岩を掴み・跳び渡り,土石に足を取られながら崩壊した沢を約100m下った付近にさしかかるころ,注意して沢沿い山側に遍路道又はへんろ札・赤いテープ等を発見して下さい。特に下山は足元に注意して転倒しないよう崩壊現場を脱出することです。(沢は危険だからと山側を選んで下ると迷い込みます。)
  • 登り口まで下山すると後は舗装道路を700m下ると奥の院です。この舗装道路上に山側から流れ崩れた倒木・落石・砂利・盛土等が3ケ所出来ており道を塞いでいます。最初の2ケ所は無難に通過できますが,最後は高さ4〜5m位(幅は20m余だろうか)有り,木が重なり乗り越えるのが難しい状態でした。
    乗り越えるのは危険であろうと判断して,一度手摺り越えて川側に下りて川上80mほど登り,塞がる個所を越えたであろう場所で再び舗装道路に上がりました。多少危険な想いで通過しました。既に歩かれた方々の踏まれた足跡,急場の俄か道が出来ている所を見つけることもできますが,危険です。
    今に想うと無理してよじ登り越えて行く方が良かったのではないかと考えます。遍路道で迷うのでなく通過するのに危険で心配な個所です。
  • 奥の院からの舗装道路を少し登った所にロープを張り,通行不能の表示あり。
    (私は逆打ちですので奥の院登り口より横峰寺まで2時間10分で登りました。)

(6)初めての逆打ち

    昨年10月22日〜24日(3日間)で大窪寺から76番金倉寺まで巡拝しました。 逆打ちにはあまり興味無かったのですが,昨年3月足摺岬近くで歩き8巡目で内2回の逆打ちされる方にお会いして逆打ちの良さを聞く。歩き遍路の多くの方にお会い出来ること。(追いかけるでも無く前から遍路が来る)また順打ちとは違った景色を見てまた楽しめることだと感想を聞く。私も5巡目となると変化を付け今までに無い良さを楽しむのもいいかと逆打ちをスタートさせました。76番まで遍路道を間違えることも無く順調に歩けました。今回は11月28日〜12月6日(9日間)の区切りで75番善通寺から41番龍光寺までを歩き遍路することにしました。
    前半から中盤まで天候に恵まれ快適で満足できる申し分のない遍路旅でした。
    しかし,何時までも快適で気楽な旅は続きません。後半,12月4日の46番浄瑠璃寺から三坂峠を越える早朝からとうとう雨となりました。大宝寺,岩屋寺へは雨具を被り歩け歩けです。翌5日も早朝から残り雨で薄暗い中,鴇田峠越えしました。これも歩き遍路の修行に欠かせぬものと受け入れ,ひたすら歩くのです。
    残り40寺は来春に楽しみに取っておこうと考えています。 5巡目であり何か従来の遍路体験と違うものを取り入れようと逆打ちをしていますが,ほぼ半分経過した現時点での感想・想いをまとめると次のようになります。

  • 同じ88ケ寺礼所,同じ遍路道を右回り<順打ち>するか,左回り<逆打ち>するかの違いであり,当初考えたほどの新鮮さ・新発見も無く,やや期待薄である。
  • よく言われるところの逆打ちは厳しい。確かに本来の遍路道のコース設定に逆らい反対側より歩くのです。厳しいと言えば厳しいが,そう大した違いは無い。
  • 功徳をより授かるとのこと。難しいことは解りませんが,功徳をより多く授かるんだと心に信じて,弘法大師を崇め巡拝することが,より重要であろうと考える。
  • 一度は逆打ちを体験しておこうと考えた初心を忘れず来春には結願させる。 後半にはさぞ予期せぬ楽しいこと,新発見が待っている。そして功徳を授かり成長した自分が存在するんだと信じて巡拝しよう。

以 上


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