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![]() | 宿坊 (しゅくぼう) |
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宿坊は、お寺が経営する宿泊施設です。僕の事前のイメージは、「お寺には大きな空き部屋がたくさんあって、行き暮れて一宿一飯を乞う者には分け隔てなく門戸を開いてくれる。善意で泊めてくれるのだから、旅館やホテルのようなサービスを期待してはならない」というものでした。ところが、実態は全く異なりました。
まず第一に、歩き遍路は宿坊に泊まるのはなかなか困難です。僕の場合、断られることの方が多かったです。四国を歩いて初めて知ったことは、宿坊は、主に団体客のために営業しているのだということです。シーズンオフや、シーズン中でも団体客の予約のない日には休業しているのが普通です。たまたま運良く、団体客の予約があって、しかも部屋があいていれば、個人の歩き遍路でも泊めてもらえることもあります。
お寺の立場に立ってみれば、わずかな人数のために大浴場の湯を沸かしたり、厨房の人を手配するのは経営的に難しいというのも理解できることではありますが…。
料金は、1泊2食つきで5500円(税別, 1999年改定)というのが基本です。民宿などの場合、6000円〜6500円が普通ですから、比較的格安と言えます。ただ、個室の指定や、料理の種類によって、もっと高い料金メニューをもっているところもあります。例えば、6番安楽寺では、個室を指定すると6500円だそうです。また23番薬王寺の薬師会館では、料理のランクによって3段階の料金が選べます。
37番岩本寺の宿坊客室宿坊に泊まるといっても、普通の旅館に泊まるのと大きな違いがあるわけではありません。ただ、僕の知る限り、宿坊の客室にテレビはありませんでした。入浴を済ませ、食事を終え、夜のお勤め(朝の場合もある)を済ませれば、あとは静かに寝るだけです。
「お勤め」は、夕食後、または、朝食前に、宿泊客が本堂に集められて、日頃はお葬式や法事でしか体験できない「お勤め」に参加します。所要時間は30分ぐらいのものだと思います。「義務」ではありませんが、折角ですから僕は参加しました。
61番香園寺の本堂長い時間正座していると、足のしびれるのが困ったものですが、途中から適当に足を崩している人もいます。その点、61番香園寺の本堂はイス席なので、しびれる心配はありません。
また、お遍路中は、本堂でも大師堂でも外から拝むだけですが、宿泊していると、本堂の中を歩き回って様々な仏像や装飾品を鑑賞する機会も得られます。これも宿坊に泊まるメリットの一つと言えるでしょう。
室戸岬の24番最御崎寺の宿坊に泊まったときに、そこに1週間連泊して、求聞持法の修行をしているという女性に出会いました。お遍路で回って来たのに、室戸岬にまつわる空海の不思議な気を感じて、そこでストップしてしまったのです。何も、先を急いで日程 計画通り歩くだけが遍路ではありませんね。宿坊に泊まるということには、納経所で朱印を押してもらうだけではない、より深い交流のチャンスがあるということです。
夕食風景(38番金剛福寺)
客室での食事(鯖大師)食事は、部屋で食べるようになっているところと、食堂で他のお客さんと一緒に食べる場合と色々です。食堂の場合は、個人客同士が同席することになるので、遍路話がはずみます。
ところで、お寺の食事と言えば、精進料理(肉や魚を使わない料理)を連想しますが、少なくとも僕が泊まった宿坊では、どこも精進料理ではありませんでした。例外なく刺身がついていたし、鶏の唐揚げが出たこともあります。
61番香園寺に予約の電話をしたときは、「その日は子供の団体が泊まるので、食事がハンバーグになるけどいいか」と聞かれました。実際には、行程の都合で後日キャンセルしたので、残念ながら「お寺で肉を食う」という経験はし損ねましたが、要するに「何でもあり」ということです。
ビールやお酒も注文できます。他のお遍路さんから聞いた話ですが、あるお寺では、テーブルの真ん中に大きなやかんがおいてあって、そこから日本酒を無料で自由に飲めるようになっていたということです。
四国を回り終えて、高野山の宿坊に泊まったときに、やっと精進料理を頂くことができました。僕は、遍路中はずっと禁酒して来ましたが、高野山で初めてお酒を1本つけてもらい、ひとり結願を祝いました。
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