掬水へんろ館体験的・遍路百科談話室
掬水へんろ館先達 (せんだつ)

先達

今のように地図やガイドブック、交通機関などが整備されていなかった時代に、安全に遍路を行おうとすれば、遍路経験のある指導者について歩くことが必須だったと思われます。この指導者が制度化されたものが「先達制度」です。現代、歩き遍路は、ガイドブックなどで情報を収集して歩くのが普通ですが、バス遍路や車でのグループ遍路では、先達の指導の下に八十八カ所を巡ることも多いようです。

お先達さんが同行していると、読経の仕方や巡拝の作法などを詳しく指導してくれるし、また札所間の移動中には色々と面白い話を聞けたりするというメリットがあります。遍路のスタイルは千差万別、厳密な決まりはないとはいうものの、ひとりよがりの遍路にならないためには、一度は先達に導かれた遍路を経験するとよいのかもしれません。僕自身、そうした経験がないのが残念です。

四国遍路の先達制度

四国八十八カ所霊場会の先達制度は下記のようになっています。

先達制度
階級資格など
元老大先達寺院住職で定員5名 現在、不在。
特任大先達大先達から推薦。4部会すべての承認。定員10名。
大先達権大先達を3年以上、巡拝3回以上。信仰心・人格。
権大先達中先達を3年以上、巡拝3回以上。信仰心・人格。
中先達権中先達2年以上、巡拝2回以上。大師信仰堅固。
権中先達先達2年以上、巡拝2回以上。大師信仰堅固。
先達巡拝4回以上。遍路先導経験豊富な者。

1998年12月現在、約7000名の先達が公認されています。

先達になるためには、寺院が候補者の修行ぶりをみて霊場各地域部会に推薦するのが原則です。次いで、部会が霊場会に推薦し、霊場会の先達審査委員会にて決定。パスすると内定書が送付され、善通寺で毎年12月に開催される先達研修会を受けてから正式認定される--という手順になっています。

[2001.9.24 追記]
先達の資格申請の手続きについては下記のページが参考になります。

最近「先達」として新任された方の人数は下記の通りです。

僕の出会った先達さん

先達の杖
朱の杖

先達として認定されると、霊場会から、朱塗りの杖が支給されます。

2000年1月に徳島県内を歩いたとき、先達になったばかりという70歳の元気な男性に出会いました。その方のお話によると「先達も高齢化が進んで人数が減少している。だから回数だけ満たしていれば実質的に誰でもなれる。昇格していくのは別だろうが…」とのことでした。

また、民宿で同宿となったご60代ぐらいの夫婦は、先達として年中、お遍路さんを車で案内しているとのことでした。ご主人は「50年前には歩いて回った」と、若い頃に歩いた遍路道の思い出を懐かしく話して下さいました。

僕の妻の知人にも何度も四国を回った先達の方がいて、今では、高齢のためバスツアーに参加できない方に頼まれて四国に同行したりしているようです。「金はいらん」と言っておられるようです。「先達」が職業として成り立っているのかどうかは存じませんが、「お四国」に感謝しながら生きていく一つの人生の形でもあるでしょう。

参考資料


[体験的・遍路百科] 目次に戻るCopyright (C)1999-2000 くしまひろし