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掬水へんろ館四国遍路ひとり歩き 2004年春

あとがき

5月9日(日)

帰りのバスは定刻の7時より少し早く、東京駅に着いた。昨日までの四国の青い空とはうって変わって、どんよりと曇り、肌寒い。あわてて、ザックからウィンド・ブレーカーを引っ張り出す。ザックの中の荷物で、四国で1度も使わなかったものはこれぐらいだ。

ザック

前回までは、38リットルのザックを使ってきたが、今回は何と18リットル。どこまで荷物を削れるか挑戦してみた。従来のザックは容量の割りには軽いつくりだが、それでも1キロぐらいある。荷物を減らすだけでなくザック自体も軽いものを選ばないと、あまり減量化の効果がないと考えた。今回のザックの自重は700グラム。そして、このザックに入らないものは持たない。それでも、この季節なら問題ないことが分かった。何人かの人から「荷物が少ないですね」と、うらやましがられた。今回、山道を結構楽に歩けたのも、タネを明かせば荷物が軽いからだ。こんなに簡単に、人生の荷物も体の贅肉も減らせたらいいのにね。

ウィンド・ブレーカーは1度も使う機会がなかったので「あと350グラム削れた」と思っていたが、最後の最後に役立ってくれた。

別格の1番から3番にお参りしたのは今回が初めてだった。地蔵越、ふだらく峠、由岐回りといった初めての道も歩くことができた。6番安楽寺を除く6泊は初めての宿にお世話になった。人里離れた山中の番外霊場・建治寺での一夜も忘れえぬ思い出である。

しかし、何と言っても今回の特徴は、お遍路さんが多かったということだ。僕と同年配の男性、そして、若い女性が目立った。初めて遍路に来た人々からは「もっと一杯いるのかと思っていた」という感想が多かったが、僕にしてみれば、今回ほど、常にほかの歩き遍路の気配を感じながら歩いたのは、初めてのことである。番外霊場を訪れた際だけ、いつもの「ひとり歩き」の気分が戻った。

これまでの区切り打ちも、それぞれに感銘深い旅だったが、1年半ぶりの今回は、初回の遍路の直後のような高揚感、心地よい「遍路酔い」がしばらく残った。この続きを歩けるのはいつのことだろうか。

終わり
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