掬水へんろ館前談話室
掬水へんろ館四国遍路のすすめ - その方法くしまひろし

バスや車を使った遍路については、多くのガイドブックがあるし、僕自身は経験がないので、ここでは述べません。

「通し打ち」と「区切り打ち」

普通、1日に歩く距離は30〜40キロです。マラソンの選手は2時間で40キロ走りますが、それはその1日だけ、何も荷物を持たないからできることです。歩き遍路の場合、少なくとも4〜5キログラム程度の荷物は担いで歩かなくてはなりません。1時間4キロとして10時間歩くと40キロです。町中を早足で歩くと1時間に6キロぐらいは歩けるものです。しかし荷物を担いで来る日も来る日も歩くのです。時速6キロなんてそうそう続きません。1日40キロがいいとこです。また山道もあれば、大雨の日もあるでしょう。そういうわけで、歩いて1周1200キロの四国遍路をするには、健脚の人でも32日、普通は40日近くかかります。

そんなに長い休暇をとれない人はどうしたらいいのでしょうか。僕のように現役のサラリーマンは病気でもしない限り、そんなに長い休みはとれません。そこで、1200キロの行程をいくつかに分けて、少しずつ歩くという方法があります。1回目は徳島県内の1番から23番までと決めると、約1週間で歩くことができます。これなら、5月の連休や、お盆休み、年末年始などで何とかなりそうです。2回目は、1回目の最後となった札所から歩き始めます。札所と札所の間で切れ目とならざるを得ないときは、バスや電車に乗った駅から再開します。こうすると、擬似的ではありますが、とにかく「歩き通す」ことができるわけです。

夏休みの大学生とか、定年退職後のご夫婦など時間の取れる人は、1回でまとめて歩くことができるでしょう。これを「通し打ち」と言います。一方、分割して歩く月賦のような方法は「区切り打ち」と言います。もちろん「通し打ち」が理想ですが、「区切り打ち」でも、歩かないよりは歩いた方がいいに決まっています。定年退職して時間がとれるようになったら歩こう…と思っていても、そのときには肉体的な条件が整わないかもしれません。歩けるうちに歩こう…それが僕の考えです。

宿

歩き遍路の多くは、宿坊、民宿、ビジネスホテルなどに泊まります。昔ながらの「遍路宿」というのは少なくなっていますが、民宿の中にはそうした雰囲気をとどめているところもあります。宿坊では1泊2食つきで5500円、民宿は同じく6000〜6500円程度のところが普通です。40泊しますと、宿代だけで25万円ぐらいかかる計算になります。

中には野宿で歩いている人もいます。遍路のコース上には、無人のお堂やバス停小屋など、野宿に役立つ場所も結構あります。寝袋やマットも担がなくてはならないし、汗まみれになっても風呂に入れないというのもつらいものがありますが、費用の側面だけからでなく、修行としてあえて野宿を選択している人もいます。2日野宿したら3日目は宿に泊まって風呂に入るというように折衷案を選択している人もいます。

歩き遍路に適した宿は、観光ガイドブックから探すのは困難です。「へんろみち保存協力会」が出している「四国遍路ひとり歩き同行二人」というガイドブックには約1000カ所の宿泊施設と詳細な地図が掲載されています。また、野宿に適した場所についても、水場やトイレの情報を含めて地図上に詳細に表記されています。いかなる方法をとるにしても、歩き遍路には必携の資料です。

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