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白瀧まゆみ 『虹がゆく 』 (巴書林,1994年)
ISBN4-946407-97-9著者は岐阜県郡上八幡在住の歌人で1957年生まれ。1993年、当時36歳の著者が、6月11日から7月21日までかけて四国を歩いた記録です。
歩き遍路のつもりで四国入りしたものの、すぐに車のお接待を受けて断りきれず、室戸近くまで走ってしまいます。しかし雨の中、菅笠と合羽姿の僧形の歩き遍路を車の窓から見かけたことから、たまらなくなって下車、ようやく本当の歩き遍路の旅が始まります。
数日後に、遍路歴20回のある大師堂の住職(69歳)と出会い、この方を先達(著者は「師匠」と呼ぶ)として88番まで、あらゆることを語り合いながら歩いていきます。
道に迷えば、予定も狂います。
「へんろ路を間違えることはよくあることだ。(中略)あれでもない、これでもないと迷いながら、結局それが自分で見付けた、新しい道になる」(p.86)
よく遍路を人生にたとえますが、人生が人それぞれであるのと同様に、遍路も人それぞれということでしょう。
88番を打ち終えた「師匠」と別れた著者と、車でスキップしてしまった区間をたどって再び24番まで歩き続けます。歩き終えたとき、心によみがえる風景は、今まで見落としていた、蟹や蟻や夏草などの自然、そして残念ながら路上のゴミです。
「ありとあらゆる『物』が世界中に散らばる中で、人は、足跡のような清らかなものだけは、残すことがない。」(p.172)
歌人ならではの表現でしょう。くしまひろし
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