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幸月 『風懐に歩三昧 』 (シンメディア,2003年)
ISBN4-901655-06-X赤銅色の顔と真っ白な顎鬚が印象的な幸月さんに、僕も会ったことがあります。1999年5月、1度目の結願に向けて屋島寺に登る途中のことでした。100キロ以上の荷物は台車に積んで運んでいるので、山道には入らず国道など舗装路を歩いておられました。「3年間(1000日)、逆打ち、野宿で歩く。今日で191日」というお話でしたが、その「千日遍路」もすでに3巡目、2000日を超えました。
僕がお会いしたとき、幸月さんは、お接待だけで食べていて、お接待を下さった方にはコピーを綴じた自作の句集を差し上げるのだとのことでした。本書は、その句集を、季刊誌「四国へんろ」などを発行しているシンメディア(旧ふぃっつ)が出版したものです。
遍路道を歩き続ける毎日の中の一瞬一瞬にシャッターを切ったような700句以上の句が収められています。一句一句、風景は香川から愛媛へ、そして高知、徳島へ、そして再び香川へと移り行き、幸月さんの逆打ちの足取りと季節の流れが感じられます。
- 林檎剥く芳香よりそふ野辺の蝶 (p.189)
- 梅雨享けて山のバス停椀洗う (p.48)
- 懐中電灯夏草照らす遍路食 (p.35)
- 汗の手で錫杖の汗拭き落とす (p.41)
- どこ踏んでも落葉 (p.25)
- 辿り来て凍飯喰らふ寺の隅 (p.76)
しかし、逆打ちで永久に歩き続けるということ、それは、道も季節も出会いの人々も、そして本人のこれまでの人生のすべてが遍く重なり合っていくということでもあるのでしょう。本書は、単に一回性の感動を記す作品を連ねたものとしてではなく、終わりなき遍路旅を続け、人々に親しまれる大らかで素朴な幸月さんの魅力を伝える作品集といえます。
2003.7.10 追記
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2003年7月10日付の新聞各紙の報道によると、著者は12年前の殺人未遂事件の容疑者として7月9日、遍路中に逮捕されました。6月27日に全国放映されたNHK「にんげんドキュメント」に出演したことがきっかけとのことです。ただ、事件の真相がどうであれ、2000日間の遍路旅における地元の方々や遍路たちとの交流、そして旅の中から生まれた俳句の数々が共感を誘うのは変わらないと思います。
なお、出版元では7月10日付で本書の販売を中止しましたが、7月18日に販売を再開したとのことです。
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