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伊藤延一 『四國へんろ記 』 (古川書房,1985年)
ISBN4-89236-228-X著者は、昭和45年(1970年)6月、特定郵便局長の職を退くまで、52年間に及ぶ郵政関係の職務を果たしてきました。そうした経歴を見ると恵まれた穏やかな人生を想像しますが、その間に三人の妻に先立たれるという心の痛手をも負っています。
本書は、著者が定年より3年早く退職した直後、昭和45年(1970年)〜昭和47年(1972年)に3回に分けた区切り打ちで念願の四国八十八か所巡礼を果たした記録です。近接した札所間以外はバスや汽車を使いながら、通算32日間で回っています。夜中の2時過ぎに目が覚めるのが習慣だという著者が毎晩へんろ宿で書き溜めた日記を元に約10年後の昭和55年に出版されたものです。
路傍の「良心市」、地元の方からいただく「おせったい」、山道の木々に掛けられた「へんろ道」の金属板など、今と変わらぬ遍路道風景の一方で、宿坊は1泊2食弁当付で900円とあり、コンビニなどなかった時代のへんろ事情がうかがえます。
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