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浅井證善 『へんろ功徳記と巡拝習俗 』 (朱鷺書房,2004年)
ISBN4-88602-189-1本書は、「四国邊路道指南」をはじめとする遍路のガイドブックを出版し「四国遍路の中興者」あるいは「四国遍路の父」ともいわれる江戸時代初期の僧・真念の業績と、現代につながる巡拝風俗などを史料に基づき検証したものです。
前半では真念が四国遍路にまつわる言い伝えをまとめた『四国徧礼功徳記』の口語訳を全文掲載しています。高野山の学僧・寂本が付した注釈などを読むと、各地に伝えられる大師伝説を民衆の目線から丹念にとりあげる遍路実践者の真念と、学究的な立場を維持しようとする寂本との関係がほほえましく感じられます。
後半では、金剛杖や白衣などの四国遍路の巡拝道具がどのように成立して現在のような形になってきたかを、史料を駆使して明らかにしようとしています。現代の遍路である僕たちは、ともすると現在ガイドブックなどに書かれていることがあたかも古来からの慣わしのように考えがちですが、本書の緻密な検証をたどっていくと、伝承の過程で変化し分化してきた相対的なものに過ぎないことを知ります。
著者は、高野山で教鞭をとる立場であるとともに、徒歩遍路6回の経験者でもあります。新居浜市在住の研究者・喜代吉榮徳氏が著わし続けている『四国辺路研究』シリーズなども援用しながら、単なる歴史学ではなく、あくまでも今現在の遍路のあり方との関わりを念頭において論考を展開しており、一遍路に過ぎない僕のような読者にとっても興味深い著作でした。
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