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氷雨心中
乃南アサ氷雨心中 (幻冬舎文庫,1999年) [幻冬舎,1996年]
ISBN4-87728-803-1

この作者の作品は、直木賞受賞作の『凍える牙』に始まって長編ばかり読んできましたが、これは短編集です。新幹線の退屈な時間をやり過ごそうとして東京駅内の売店でたまたま入手しました。本当は長編を探していたのですが時間がなく、手当り次第に手にとったものですが「当たり」でした。

線香、能面など伝統工芸の世界を舞台設定として、つかみどころなないあやふやな、でも「確かに」と思わせる心理の綾を描いています。6編の作品が納められていますが、冒頭の「青い手」を読み終えて、一体「殺人」があったのかなかったのかどちらともつかない結末に、これは実は短編集とはいっても連作物かと思ったぐらいです。実際は、独立した作品で、このあやふやでいてブラックユーモア的な味わいが本書の本領と分かりました。

作者が女性であるためか、女性の登場人物の、一途な必死な鬼気せまる怨念のようなものがぐんぐんと流れていて、息詰まるような充実感を覚えました。

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