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死の世界・死後の世界
ひろさちや死の世界・死後の世界 (徳間文庫,1991年)
ISBN4-19-599434-9

この方が平明な言葉で書かれる、仏教を基盤とした人生相談などの記事を新聞で読んでいたので、興味をもっていました。

本書は、霊の存在、死の世界、死後の世界について、基本的にはそれらは人間の心の中に存在する、あるいは、心を基盤として存在するという考え方に基づく仏教の入門書です。輪廻の思想の解説と有意義な人生へのアドバイスを与えてくれます。近代合理主義の下でいかにして宗教が成り立ちうるのかを示す良い例を示しているように思えます。

タイトルにある「死の世界」と「死後の世界」の意味についての宗教的・哲学的な議論から、供養や戒名など日常の仏教的風俗についての解説まで気軽に読める本です。

輪廻の思想は永遠の時間を前提としていますが、私は時間の問題を考えるうえで、本書で紹介されている次のようなインド神話に心をひかれました。 ヤマ(兄)とヤミー(妹)という双子があってふたりは熱烈な恋をして結ばれた。その兄が死んだとき、ヤミーは悲しみ、憔悴のあまり死にかけた。そこで神々はあわてて昼と夜を作った。それまでこの世には昼夜がなく時間は一様に流れていたのだ。昼と夜ができたとき、「きのう」ができ「おととい」ができた。そこでヤミーは「きのうヤマが死んだ」「ヤマの死はおとといになった」と言うことができるようになり、ヤミーはヤマの死を少しずつ忘れることができるようになった。

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