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平成娘巡礼記 四国八十八カ所歩き遍路
月岡祐紀子平成娘巡礼記 四国八十八カ所歩き遍路 (文春新書,2002年)
ISBN4-16-660265-9

三味線奏者・月岡祐紀子さんが歩き遍路に出たのは、高田瞽女(ごぜ)との出会いがきっかけです。瞽女というのは、三味線と唄で旅して歩く盲目の女芸人のことで、600年の歴史があり、1964年頃まで実在したそうです。最後の瞽女といわれる新潟県の小林ハルさん(100歳)の演奏を聞いて心をゆさぶられた月岡さんは、その哀切さ、必死さを表現するために「目をつぶすことはできないが、放浪の旅なら…」と考え、三味線の演奏を奉納しながら四国八十八カ所を歩くことにしたとのことです。1度目は1999年春に一人で歩き、2000年は3月13日から5月11日まで、カメラウーマン・二木美和さんと二人旅でした。

本書は、この2度目の旅を中心に、前年の一人旅の思い出も取り混ぜつつ、歩き遍路という「不思議の国」での不思議な旅を書き綴ったものです。道中の一期一会の出会い、1巡目で縁を得た人々との再会、三味線演奏を通した地元の人々との交流などが、著者の素直な感覚で表現されています。

2度の遍路旅では、道中傷むことを恐れて一番安い三味線を持参したのに、今ではそれが何物にも代えがたい宝物になったといいます。もちろん、旅の思い出と感動、旅の後も続く遍路仲間との交流、長五郎さんの「地球の片すみでかがやく」、そして2度目の旅を通して作曲した「遍路組曲」…と、数え切れないほどの宝物を著者は「不思議の国」の四国から得たと言えるでしょう。「無財七施」に「涙」を加えて「八施」というのも、その思いつきの経緯を読むとうなずける視点です。

なお、本書は朝日新聞(高知版など)に連載された日記をベースに、コラム記事などが加筆されたものです。


くしまひろし

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