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湯本香樹実 『西日の町 』 (文藝春秋,2002年)
ISBN4-16-321190-X主人公が少年時代に一時期同居した祖父、「てこじい」の物語です。この作品は「てこじい」という人物の強烈な個性の描写にほとんどが費やされています。主人公が母と二人で住むアパートに突然転がり込んだてこじいは、初めは、偏屈な困り者にしか見えません。しかし、伝え聞く若かりし頃の活躍や、奇矯な行動を通じて、実に味のある老人の人生が見えてきます。そして、家庭の危機に際しての行動の奥にある家族への優しさがふんわりと浮かびあがり、自らの死後には、ずしりとした存在感を残しています。戦後のある時期、この人物は確かに生きて、確固たる人生を送ったのだと納得させられるていねいな作りです。
てこじい、母親、叔父の3人しか登場しないのに、その濃密な人間関係は、実にリアルに感じられます。
著者は、少年たちが町のある老人の死を観察するという、名作「夏の庭」で世に知られましたが、この作品も老人と死を見つめるという、一風通じるモチーフをもっています。
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