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愛のゆくえ
ブローディガン愛のゆくえ (新潮文庫,1975年)
ISBN4-15-120021-5

お客が自分で書いた本を持っていくと書庫に保管してくれるという奇妙な図書館の管理人と恋人との物語です。

世間離れしたこの図書館の世界と、飛行機でメキシコまで堕胎にいく旅行にまつわるおのぼりさん的、またはエキゾチシズム的な経験との落差から、著者が何をモチーフとしたかったのか僕には分かりません。しかし、冒頭の図書館の描写だけでぐんと引き込まれるし、その不思議な空間は惹きつけるものをもっています。

結末は、これらの失われてしまった凡庸な生活が描写されています。その嘆きを作者は描きたかったのかもしれません。

本書はずいぶん前に読んだ本で、記憶の中では冒頭の図書館のくだりだけが印象的で「好きな本」としてずっと心に残っていましたが、小川洋子『薬指の標本』に触発されて本書を再読してみると、全体のテーマは図書館そのものではなかったようで新鮮な読書となりました。

なお、僕が読んだのは1975年に発行された新潮文庫版ですがすでに絶版で、現在ではハヤカワepi文庫 として再版されているようです。訳者は同じ青木日出夫氏です。

〔広 告〕
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