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小川 洋子 『博士の愛した数式 』 (新潮社,2003年)
ISBN4-10-401303-X僕は理科系ですから、整数論へのあこがれは親しみのあるもので、そこにある種の質素かつ清潔な光が満ちているとは思っていました。でも数式や素数なんてものを媒介にして、こんなに暖かい物語が綴れることに驚きました。
しかも、主人公の記憶は80分のエンドレステープのようなものという特異な設定があります。通常の概念では人と人との「愛」、いや、単なる人間関係がなりたつことも困難と思えるのに、究極の一期一会の繰り返しが見事に物語となっているのです。
このユニークな設定のなかで紡ぎだされる微笑ましい童話の結末は、決してハッピーエンドというわけでもありませんが、終盤近くに明かされる「もう一つの愛」とも相まって、深く納得させられる読後感があります。
主人公が示す「数」へのこだわりをここまで描けるのは、この作者も相当の数学通に違いないと感じましたが、著者の経歴は純然たる文科系で、この点も驚きです。
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