室井佑月『熱帯植物園』 (新潮文庫,2000年) [新潮社,1998年]
ISBN4-10-130231-6
何年か前、出張先のホテルのテレビでNHKの「わたしはあきらめない」にこの作家が出演しているのを偶然見ました。内容は覚えてませんが、何か触発されるものを感じました。僕は面食いなので、見た目も派手なので気にはなっていましたが、読む機会がなく、先日書店をぶらついたときにたまたまこの短編集が目についたので、読んでみました。
表題作の「熱帯植物園」ほかいずれもが1人称の高校生を主人公とするものですが、僕には「面白いけど、感じない」というのが感想です。自分の過去から現在までの生活感覚とあまりに隔絶していて、想像力がついていきません。僕が高校時代を過ごした宮城県は男女別学でしたから、女の子と喫茶店に入るだけで一大決意を要する状況でした。共学の高校が舞台というだけでまず見知らぬ世界なわけで、そこで展開される物語は、筋書きを追う楽しみはあるけれども感情移入しながら読む楽しみは与えてくれませんでした。SFだと思って読むといいのでしょうか。
ただ日活ロマンポルノ(古いね!)の原作には適してるかもしれません。ロマンポルノは玉石混交でしたが、ときどき常識のタガをとりはらって遊ばせてくれるディープなストーリーがありました。本書に収められた作品も映画館で見たら結構堪能できるような気もします。