斎藤駿『なぜ通販で買うのですか』 (集英社新書,2004年)
ISBN4-08-720238-0
『通販生活』というカタログショッピングで有名なカタログハウスの社長が書いた本です。
著者は「ルームランナー」のヒットから通信販売ビジネスに入ります。これは1970年代のことですが、現在の健康ブームの先駆けのような要素があります。しかし調子にのってビジネスを拡大しているとき「超音波美顔器」で躓いたことから、一度立ち止まり、通信販売というものについての自分なりの哲学を確立するに至ったようです。
本書は、日本における通信販売の成功要因を分析するとともに、取り扱う商品について、製造メーカーではなく流通業者の立場として何ができるのか、何をすべきかを真剣に考え抜いた結論を語っています。カタログを有料で販売する─という、ある意味では殿様商売的に見えるスタイルも、著者の哲学と実利的な戦略から生まれた、きわめて合理的なビジネス・モデルであることが分かりました。
特定のメーカーの製品を「担ぐ」ということと、一般に消費者が期待する「選択肢を増やす」ということは対立する面があるし、ネット販売が加速するなか、著者のビジネスモデルがどこまで通用するのか興味のあるところです。