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掬水へんろ館ウマヤドの自転車遍路1人旅《8月18日 - 16日目》
7時出発。地元の人のアドバイスに従って、60と61を逆打ちする。
10分走って六十一番・香園寺(こうおんじ)。
21世紀を象徴するようなコンクリートでかためた寺。4階建てのビルだぞ。
文化会館みたいで、いわゆる寺の風情ではない。
お参りしてから、まじまじと寺を見た。
寺を造り直す時、こんな設計をした人もそうだが、決定した人も凄い。
反対を押し切ってこの形になったのだろう。
エッフェル塔も金閣寺も出来た時は悪評だった。
昔をなぞるのは易しいがここまでするとは。偉い!
妙なところに感心している。

六十番・横峰寺(よこみねじ)も忠告通り、バス道路ではなく、
香園寺から11号に戻り、松山方面に3キロ走って、大頭(おおず)を左折、
ルート147、湯浪(ゆなみ)遍路道に入る。
開、大郷、など谷間の村を過ぎると5キロの上り。馬返で道が終わる。
馬も返す、車も返すか。

ここで自転車を置き、4キロ弱の遍路道(登山道)を歩いて登る。
石仏の前にナタデココの缶が供えてある。時代は変わる。
1時間半で横峰寺に着いた。香園寺から12キロ。
山門は比較的新しい。紫陽花がまだ咲いている。
自販機が壊れていて、寺の人がいろいろやってくれたが駄目だった。
そのかわりお茶のお接待がある。ボトルに入れてもらう。

ご詠歌を見て、ふと、考えた。
「たて横に 峰や山辺に寺たてて あまねく人を救うものかな」
ひらがなで「あまねく」とあるが、漢字だと「遍く」、遍路の「遍」という字だ。
意味は「ひろく、すみずみまで」。
だから遍路とはひろくすみずみまで道を行く、ということになる。
巡礼というのと少し違うのかな。
「巡礼」は「聖地」という言葉と一緒に使ったりする。何か西洋っぽい。
「お遍路さん」とは言うけど、「お巡礼さん」は、あまり聞かない。
でも歌舞伎にあったな、「巡礼に、ごほうしゃ」とかいうの。
これは感じだけど、遍路というのは寺がポイントじゃなくて
「道を行く」のがポイントなのか、な?
巡礼って寺がポイントって感じがする。理屈っぽいか。

帰りは同じ遍路道を35分で降りた。
車止めでスクーター遍路が考え込んでいる。
1時間ちょっとで登れますよ。しばらく地図を見ていたが、引っ返していった。
足元がおぼつかないのかもしれない。
11号線まで戻り、チャイニーズレストラン「天檀」で酢豚ライスを食べる。
11時15分、少し早い昼食。
2キロ走って六十二番・宝寿寺、1,5キロで六十三番・吉祥寺、と、11号線沿い。
石鎚(いしづち)の交差点を右折、
63番から3キロちょっとで六十四番・前神寺(まえがみじ)に着いた。
12時40分。

12番・焼山寺、20番・鶴林寺、21番・太龍寺、27番・神峯寺、
60番・横峰寺と、難所と言われる札所を終わった快感はなんともいえない。
テンションが高くなる。
ルート55、56や今治街道の走りにくさに比べ、
交通量の少ない、このルート11号は観光気分だ。
町から町へ。小松町から西条市へ、新居浜市、土居町、三島市と走り、
川之江に入ると5時になった。
今日はここまで。ビジネスホテル川之江を見つけて自転車を止めた。
走行距離73キロ、プラス歩いて往復7キロ、計80キロ。
メーターは総計1233キロになっていた。
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