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掬水へんろ館ウマヤドの自転車遍路1人旅《8月11日 - 9日目》
今日は須崎まで頑張るつもり。
8時に出て、15キロ、広域農道を走り、
峠を一つ越えて平地にある三十四番・種間寺到着。
広域農道から種間寺に入る遍路道も風情がある。
昨日よく休み、よく眠れたせいか身も心も快調。
足の痛みもうすらいでいる。

10時30分、三十五番・清滝寺(きよたきじ)に着く。
ここも楽をさせてくれない。
種間寺から川沿いのたんぼ道を走っているうちは良かったけど、
56号線に出たら車が多くて走りにくい。
高岡の商店街を右に曲がって上りの遍路道が大変。
ミカン畑と竹の林を縫うように参道が続く。
流汗坂だって。汗が流れるなんてものじゃない。汗がなくなる。
山門の天井に龍が描いてある。水が最高に冷たくておいしい。

カメラを持ってこなかった。
印象をフィルムに焼き付けず、自分の気持ちの中にしまっておこう、
と、生意気なことを考えた。
そのために録音出来る小さなカセットに気分をメモしてきた。
ポシェットが汗でやられて、そのカセットが動かない。
高岡の電気店で新しいのに買い換えた。思わぬ出費だ。
仁淀川を越え、12時40分、35キロ走ったところで昼食。
そうめんを食べた。峠の茶屋。
最近はお昼が食べられる。とにかく食べないと体力が持たない。

1時20分、三十六番・青龍寺(しょうりゅうじ)に着く。
45キロ走っている。
宇佐大橋からの横浪黒潮ラインは海岸線が美しく、とても気持ちがいい。
海岸から右に少し入ったこの寺も素晴らしい。
参道が長い。水がおいしい。お寺に来たという感じがする。

ここからは県道47号横浪公園線を走るか、宇佐大橋まで戻って、
県道23号線を走るかの選択がある。
戻るのは気が進まないが横浪公園線は見上げるような上り坂。
恐れをなして今来た道を戻ることにした。

須崎に向かう県道23号線は鳥坂トンネルがきつい。
須崎市に入ってバイクの青年に声をかけられた。
徳ちゃん!彼は実家の酒屋を手伝っている。
信号待ちしている彼のバイクにこんな形で逢えるのも不思議なことだ。
4時、彼がリザーブしてくれた、
ビジネスホテル「さつき」にチェックインした。
今日の走行距離73キロ。総計610キロ。半分近く来た。

徳久君は娘がバイトしていたプールのレスキュー仲間。
彼が東京にいた時はよく遊びに来てくれた。
夕食を食べながら久しぶりにいろいろ喋った。
この時の僕の体験談が刺激になって、彼は次の年、自転車でお遍路することになる。
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