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掬水へんろ館ウマヤドの自転車遍路1人旅《8月9日 - 7日目》
安芸市の海岸線、昔の海沿いの遍路道がサイクリングロードになっている。
松並木や自転車用のトンネルがあって、素晴らしいポイントだ。琴の浜海岸。
今日は6時に宿を出た。調子がいい。
39キロ、2時間30分走って二十八番・大日寺到着。
55号線が走りにくかった。

寺の駐車場に自転車を置く。マイカーやタクシーが10台とまってるが、
全てがエンジンをかけたまま。クーラーを利かせておきたいのだろうけど、
排気ガスの臭いがたまらない。むっとしてはいけない。
お年寄りにはこの暑さはこたえるのだ。

さらに14キロ走って二十九番・国分寺。
土佐山田で道に迷い、ここまでくるのが大変だった。
トイレはセンサーがついていて、身障者用のトイレもある。
お金がかかっているのにそうは見せないセンスがうれしい。

歩き遍路は2回目だという東京の八王子から来た人と話す。
歩いていると、交通量の激しい道になじめない。こんな遍路はもう嫌だ。
馬鹿らしくなって30番で止めて帰ろうと思っている…。
でもこの単調で面白みのない道を歩くのが現代の遍路の宿命なのかもしれませんよ。
などと、生意気なことを言ってしまった。

三十番・善楽寺は道を間違えて時間がかかった。
32号線に新道と旧道があるのに気がつかなかったせいだ。
逢坂峠もきつく、自転車を押して登った。
ようやく自販機を見つけたが、小銭がない。
お坊さんにお接待としてもらった千円札を入れようとしたが、やめることにした。
初めてのお接待だもの。このお金は使えない。我慢。

善楽寺はあまり特徴のない寺だ。
お水取りの柄杓がバーコードを貼ったまま。
金物屋で買ってきたのはわかるけど、そんなラベル、剥がせばいいのに。
苦労してきた甲斐がない。
でも、そんな些細なことに腹をたててるお前はなんなんだ。、まだまだ。

32号線をとろとろ走って五台山公園、遍路道を歩いて登って三十一番・竹林寺。
山門を過ぎて石段を登るとグリーンが美しい。
古い寺で新しいものが何もない。好きな寺だ。
寺の山門に自転車が置いてあった。ここまで登ってきたのか。

今日、86キロ走って三十二番・禅師峰寺(ぜんじぶじ)に着く。
田舎の楽な道だったけど最後は急な登り。
一般的に言えば、自転車遍路の旅は、交通量の激しい平坦な車道を走り、
そこから山道を標高100メートルくらいは登ることになる。

大阪ナンバーの車遍路に駐車場で逢った。車で着替えて雲水姿になる。
大師堂ではホラ貝を吹いた。面白い。
「般若心経、随分速く読むんですね」などと余計なことを言ったら、
「速いか?」と、きょとんとしていた。
もともと短いお経だけど、この人のお経は♪ラップ♪のように聞こえた。
彼の奇跡の話。菅笠を車の屋根の上に置き忘れて、
100キロ近くのスピードで走ったけど、
次の寺についたらちゃんと飛ばされずに屋根にあった。
これは御大師様の御利益だ。
ポジティブに考えるところがこの人の良いところなのだろう。

地元の人に教えてもらって、種崎から小さなフェリーに乗った。
自転車やスクーター優先で車は二の次。
5分でフェリーを降り、10分走って三十三番・雪渓寺に着く。
門前の遍路宿。
今日は「よさこい祭り」の前夜祭だから泊まるところはないだろうと言われた。
電話帳を借り電話をしまくる。
高知駅前のビジネスホテルにシングルの空きが1つあった。
ラッキー。7時、「B・Hタウン」到着。町で食事をしよう。

「よさこい」の活気で街中がハイテンション。月がきれいだ。遠くで花火。
洋食屋でステーキを食べた。食欲がある。力が出てきた。
須崎市にいる娘の友人の徳久君に電話する。
明日の須崎なら泊まるところは沢山ある。
高知にいて「よさこい」を見ないなんて、
もう1泊すればいいのに。
そうか、少し早いが、明日は1日、休みにするか。
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