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掬水へんろ館のらくら遍路日記〜土佐・修行道場篇(序)
北村 香織

注)ここからは遍路は脱落し、坐禅入門編になります。日記も記録的要素が抜け落ち、完全なるエッセイになります。

第3日
7月15日(木)

ああ涼風… 今日はとっても良いお天気。とはいえ時々薄曇り。今朝は3:45起床、4:00お勤め(坐禅)開始。2時間通しの坐禅初体験は、無残なる惨敗の一言に尽きる。1時間は我ながら頑張った(つもり)。1波、2波、3波、と辛い波が寄せてきたが、耐えた。でも1時間経って足を組み替えたら The END。そこからはもう5分とじっとしておれない辛さ。あくび連発で涙がぼろぼろ流れてくるわ、鼻水は垂れてくるわ(下品で申し訳ない)。私の場合、足首と股関節が硬いらしい。半跏趺坐で精一杯である。和尚さん曰く、痛みから逃げたらいかん。痛みを乗り越えてやっと第1歩、てなところらしい。参りました。。。

坐禅時の雑念 その1


目を閉じて、なんとなく「死」について思いをめぐらせていた。坐禅に関して全く無知なまま座ったので、座っている最中にどうするものなのか見当もつかない。いつもながら「死」とかそういう難しいものは答えが出ないので(はなから承知。答えを求めているわけじゃあないみたい)、何時の間にか(こうやってじーーーっと座っていて、いったい何が見えてくんねん〜?)という好奇心でいっぱいになっていた。第1回目はこの好奇心に尽きた。あとは時間感覚。あと〇分ぐらいかなぁ…とか、余裕が無くなってくると、ひたすら(まだぁ??? 足痛いー)だけ。

清水くんと小僧さんが、私のせいか今朝発っていかれたので、タオルケットと枕カバー、シーツを洗濯した。お風呂以外の水道はすべて外にあり、全部手洗いなので、たっぷり1時間以上かかった。その後は私の個人的なお洗濯。洗濯物を干していたら、お客様がお見えになって、珍しい椿の植樹のお話とか。お昼はひょっとすると和尚さんはお客さんと外で取られるかも。そうしたら、食パンとバナナとトマトに牛乳、コーヒーもある。私一人で贅沢なお昼ごはん。そういえば朝は玄米粥だった。これがなかなか美味。和尚さんは水加減を失敗したと言ってはったけど。(注.ご飯は和尚さんが支度をして下さる)

昨夜はお風呂に入ってないし、体がベタベタな上にお布団湿気ていて、それにプラス両足首の擦り剥けがかぶれて痒くて痒くて寝付けなかった。うつらうつら 夢かうつつか…という境地を行きつ戻りつ、もう起床かい、という感じ。

夕方和尚さんが帰って来られるまで、縁側に座ったり転がりながら曹洞宗の雑誌を読んだり、以前このお寺で合宿をしたという人が大きなカツオを1匹持ってきてくれたので、

そういったお客さんや電話の応対をしていた。和尚さんが戻ってこられて、残り物でお夕飯にした後、またまたお客さんが見えたので、一緒に坐禅(1時間)をする。さっき雑誌でコツのようなものを少し勉強?したせいか、ずーっと丹田呼吸(いわゆる腹式呼吸)を心がけて、1〜10または20まで数えながら呼吸を繰り返す。今回はあまり雑念は湧いてこず。でも最後の10分間ぐらいはキツかった。あと何分やろー?とかうひょえ〜〜〜とか思ってしまった。最後の5分間は腰のやや上の左右両筋と両の頬にビリビリビリ……と電流が走っていた。これは和尚さん曰く幻覚。「無」までに良いのや悪い幻覚が顕れるらしい。

お勤めの後、お客さんをお見送りして、和尚さんに行水の仕方を教わった。ここはお風呂はあるけれど、五右衛門風呂で薪からいちいち沸かさないといけないので、夏場はふだん専ら行水なのだそう。裏の炊事場の棚にホースを引っかけて、ジャーッと水を流すだけ。

昨日あれだけ汗かいたのに、顔を洗うついでに足と腕を簡単に拭いただけだったので、気持ち悪すぎて全身が自分じゃないみたい。あんまりだったので、少し迷ったけど、素っ裸で半天然シャワーを頭からかぶり、ボディソープで全身洗っちゃった。きっもちいーーい! 体がサッパリしたのはもちろんだけど、薄明かりの星の下、素っ裸ってのがこんなに自然で気持ちいいものなのかーと痛感。これは今までにない新境地でした。(だからといってむやみやたらに出来ないのが残念)

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