掬水へんろ館目次前日翌日著者紹介
掬水へんろ館のらくら遍路日記〜土佐Vおよび伊予/菩提道場前篇
北村 香織
第6日
5月4日(金)霧/晴れ (松屋旅館〜十夜ヶ橋〜サンプラザうちこ)

またいろいろ夢を見ていたよう。でもよく眠った感があり、目覚めスッキリ。6:40UP、霧の立ち込める旧街道にひとり踏み出す。国道に出ても、まだ朝早いせいかそんなに苦にならない。鳥坂峠に取っかかる頃にはすっかり青空だ。山の匂いをいっぱい吸い込んで、すっかりリラックスして登って行く。峠の手前で米袋みたいなのを背負ったおばあちゃん2人に会った。山菜摘みに来たと言ってお昼だか朝ご飯だかを広げているところ。大きなおにぎりやゆで卵、伊予柑に餡ちゃんに柿ピー…これでもかーというほどのお接待。私もその場にすわっておにぎりをいただきながら世間話。札掛までの自然の道はほんとうに気持ちよく、久々のお日さまを満喫した。

 正午前に洒落た建物を発見、ついふらふらと寄ってみると臥龍美術館とある。美術館といってもギャラリーに近く、料金も無料。とくれば私が見逃すはずがない。中に入ると池田満寿夫展をやっていた。私は芸術には詳しくなく、単にそういう空気が好きなだけで価値なんかもさっぱり解からないけど、テレビなどで私が勝手に抱いていた彼のイメージにマッチした作品(満寿夫ちっくな大胆なエッチング)が多かった。2Fはカフェとミュージアムショップになっていて、さすがにセンスのよい品揃えで私はタケダフミコさんという人のリトグラフに目が釘付け。お遍路さん姿ですっかりここの虜になってしまい、カフェでかなりの時間のんびりしていた。

 河を渡って大洲の町を国道に沿って抜けていく。気分的にもめちゃキツい。一旦すわると足がもう固まってしまって、次の1歩がロボットのようにギクシャクなる。やっと十夜ヶ橋着。さっそく橋に行ってみると、あ、これですか…。予想以上に小さいし、上も下もコンクリートでイメージが崩壊したけど、お布団をかけてもらったかわいらしいお大師さん像に合掌。

 内子町に入ってすぐに国道をそれ、田んぼの畦道のような道になった。膝まで伸びた雑草や草花の間を縫うように歩くのが楽しい。その道がやがてアスファルトになって、公園のような作りになってきた。本日のお宿へは池の横から200mの上り道。下の駐車場にギィやんとは逆の色したネコがいた。久々に相手になってくれたネコさんで、鳴き声も高くか細い。16:35サンプラザうちこ着。

 受付の人の感じもよければ、建物全体の雰囲気もすっごく感じいい。丁寧にお迎えして下さった上に、案内されたお部屋に私は驚嘆し、心底感動したのだった。なんとそこは会議室で、60畳ほどはあろうかというフロアの一隅にたたみを敷いて8畳間を作り、恐らく他のお部屋同様の備品を用意して下さっていた。ここは船舶関係者の保養施設みたいなもので、簡保の宿的なある種公営に近い施設なのに、本当に従業員の皆さんすべて気持ちのよい応対をして下さった。あの姿勢はサービスに対して、各自がしっかりしたものをお持ちなんだと思う。ここでの応対にはすっかり心身癒していただきました。感謝。

本日の歩行距離: 34km
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