掬水へんろ館目次前日翌日著者紹介
掬水へんろ館のらくら遍路日記〜土佐Vおよび伊予/菩提道場前篇
北村 香織
第5日
5月3日(木)小雨/晴れ (アイリン〜41,42,43番〜松屋旅館)

またうつらうつらと夢を見て(でも内容忘れた)、よう寝た!という気分。受付の人が「お不動さんによろしく」と言われ、こうしてお不動さんの後を辿れるご縁を心からうれしく思う。旧松尾トンネルを抜けて、宇和島市内に入ると、左足首にちょっと痛みを感じる。宇和島の街中では見事に迷ってしまった。気力、体力ともにお城に寄るパワーはなく、道行く人に何度も聞いてやっと遍路道にもどる。遍路マークが気持ちの上でどれだけお遍路さんに貢献しているか、歩きの人には本当に実感もって理解してもらえるだろうけど、この時の私もホッとして、それで特にお腹が空いていたわけではないのだけど、ついミスドに寄っておやつにしてしまった。北宇和のFuji(大型スーパー)の一角で、窓の外は広場になっていてGWのイベントで餅撒きならぬ菓子撒きをしていた。思わず参加したい発作がこみ上げてくるが、遍路姿で子どもと勝負するのもなぁ…。

 久々の日光(かなり薄めだけど)の下、県道をたんたんと歩く。背中をまっすぐにすると肩が楽、ということに今頃気付く。唐突に、お遍路での「関係性」に特に現代のお遍路さんたちはハマって、それを求めて歩いているのかな…と思う。私は少なくともそうかも。大声でラルク・アン・シエルなんかを歌いながら、13:10、41番龍光寺着。たぶの木での夫婦遍路さんに会う。彼らは門前まで打ち戻って行かれたが、私はお墓の脇から小山を越えるショートカットコースを選択、おかげで一足早く42番佛木寺に着き、また顔を合わせた彼らに驚かれた。でもこの小山、思ったより本格的な山道?でしかも下りは小川状態になっていました。UPしかけたらサファイアちゃんが到着、門前の屋台のアイスクリンに彼女は指をくわえるかのような流し目。気持ちわかる…。

 佛木寺から歯長峠へと向かう道は、私好みの里の風景。新緑に染まって落ち着く〜。山道を行くか少し迷い、道端にいた警察官やおじいに山道の状況を聞いた。結局あまり参考にはならず、独断で山道を選択。歯長峠はなかなか手強い道だった。車道との分岐には「苦を取るか楽を取るか」との厳しい文句の立て札があり、そんなに言われると苦を取らざるを得ないでしょー。鎖の場所はけっこうな急斜面が長く続き、足首がフラフラになった。まさかこんな手強い道とは思わず、水も持たずに突入したのがちょび不安。サファイアちゃんが後ろから登ってくるのが見える。なぜか競争心に火がついて、追いつかれないように下りなんか走ってしまう。15:40、やっとまともな道に出て自販機にありつく。休憩していると農夫さんが道を教えてくれ「あと4〜50分で行ける」と言う。そっか、ギリギリかな〜と思っていると、案内板の標示は5km。なぬっ!そりゃあ絶対納経に間に合わん? ここからは超スピードアップ、我ながら競歩さながらの歩きで、それでも道々出ている標示と時間とを計算すると挫けそうになる。でも努力は諦めたくない、たとえ納経できなくても…。ほとんど無理と思っていたが、なんと16:50、43番明石寺到着。ああ神様ありがとう〜。

 納経も無事済ませ、今夜のお宿は地図で見ると43番から旧遍路みちをまっすぐ下った下にある。明石寺はこんもり山の中腹にあり、どうやら境内の裏にはミニ八十八ヶ所がぐるっと作られているらしい。一応駅への矢印なんかもあるので早速歩き出したものの、途中からまったく訳がわからなくなり、また同じ場所に出てしまう。2,3回トライしてその都度違うコースを行くのだが、結局同じこと。納経所へ行って聞いてみるも、豪快なお坊さん曰く「その辺で迷うようじゃあ絶対無理ムリ。来た道戻って回って行き」。この言葉には一理あるとは思うけど、納得いかなくて返ってまたまた闘争心に火がついた。くそー絶対山越えしちゃるっ! とはいえその後も何度か迷い、陽も翳って薄暗いこの山中に心細くなるのは必然…。でもどうしてもこの道を行きたくて、飽きずに彷徨った。そしてようやくビンゴ! そーだ、このミニ八十八ヶ所、逆に辿っていけばいいんだ。赤土に埋め込まれた各札所のご本尊像、ちゃんと何番って刻まれている。ようやっと脱出成功。苦しかった…。

 松屋旅館までも少し道に迷い、地元のおばちゃんに送ってもらって17:50旅館着。実はシゲルちゃんも今夜はここに予約しており、今日は一緒に夕飯を食べようと約束していた。あまりに私の到着が遅いので、けっこう心配して待っていてくれたらしい。ゴメンナサイ。すぐにシャワーして洗濯機借りて、シゲルちゃんと町に出る。旧街道沿いの古い町並みが情緒的。あまり食べ物屋さんが見当たらず、見つけても定休日だったり苦労した。が、道路沿いに中華料理屋さん発見。シゲルちゃんがご馳走して下さって、まずはビールで乾杯。ぷはーうま〜っ。ここのお料理は何もかも本当においしかった。量もたっぷりあって、たぶん気のいいマスターが私たちがお遍路さんと知ってサービスしてくれてたんだと思う。シゲルちゃんも「安すぎる」って言っていた。2人とも本当にごちそうさまでした。

本日の歩行距離: 38km+迷った分1.5km
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