掬水へんろ館目次前日翌日著者紹介
掬水へんろ館のらくら遍路日記〜土佐・修行道場篇 (本篇U)
北村 香織
第1日
3月16日(金)晴れ

漠然と日程は決めていたものの、実際にはっきり行けるとなって準備を始めたのは1週間前。高知までの高速夜行バスは前後2日ほどは既に満席状態で、やむなく電車で行くことに。前日は学外実習の最終日で、私にとって大切なひとつの別れがあった。その実習記録やら何やらで、荷物をまとめるのも当日慌しく家を出発。京都からJR新快速で新大阪へ、そして岡山まで新幹線。混んでいたのと荷物があるのとで席には座れず、岡山からやっと席にも気持ちも落ち着いてほっとした。瀬戸大橋を初めて電車で渡る。上の高速道路からのとはまた全然違って感激。5分ほどでもう四国。四国に入ると同時にウトウトし、気づいたら土佐山田の手前だった。16:20高知駅着。

JRで行くことになって今回はぜひ丸和石材さんから…という思いがあり、一夜の宿をお願いしてある。歩こうかとも思ったが、お夕食を準備して下さっているとのことなので、遅くなってはいけないと医大までバスで行くことにした。駅前は想像以上に寂しい。風が強くしかも冷たい。これではシュラフなしのテント泊が思いやられる…。それらしきバス停で待っていると、おばちゃんが話し掛けてきて、バスが来るまで相手して下さった。バス待ちのついでかと思っていたらどうも違ったようで、私が乗り込むと道を歩いて行く後姿が見え、恐縮したのと同時に心温まる感じを覚えて、四国に来たことを改めて実感した。ところで医大行きバスはものすごいスリルと興奮?!に満ちて、まさにジェットコースター並みだった。善楽寺のところから急に路地裏に入り込み、バスだけで精一杯の道幅なのに対向車がわんさか向かってくる。それなのに運ちゃんは平然と突っ込んで行き、対向車たちは慌ててバックしては両脇の民家の庭先に一台ずつ散って行く。その動きがまた迅速でキビキビしていて気持ちがいいくらい。なかなか楽しい、けどちょっと疲れたドライブでした。18:00丸和石材さん着。

さっそく接待所に案内され、すぐにお夕食が運ばれてきた。今夜は私を含めて3人のお遍路さんがお世話になる。一人は40代位の女の方で、もう一人は鹿児島から来られた禅僧らしき方。お食事は社長さん自ら作って下さったもので、大根の煮付けやお味噌汁、お魚など素朴だけれど豪勢なもの。ご飯は丼いっぱいで、さすがにこれは食べきれず、おにぎりにして翌日のお弁当にさせていただいた。食べながら社長さんのお話を聞く。夏にお会いした時より痩せられた様子だったが、今何かの加持中で明日が満願とのことだったのでそのせいかも知れない。お口の方は変わらず滑らかで、今度四国の臍にあたる場所に誰でも参加できる行場を作るというお話や、関わった墓地から大日如来や首なし大師像やらが出てきたお話、温泉を2ヶ所大日如来かどなたかに(忘れてしまいました)告げられて、実際調べてみると本当に出そうだというお話等々たくさん語ってくださった。常に前を向かれて新しい夢を実現なさっていく社長さんは、どう見てもそこら辺にいるオヤジにしか見えないところが凄い。無欲に人のために己を生かしておられるからこそ、仏さま方がお力をお貸し下さっているんだろう…と思う。その姿勢に学ぶところ大である。

ここでアルバイトをして住み込まれている遍路の先達らしき男の方が、野宿ポイントや色々な情報を教えて下さった。3人せっせとメモをして、それから皆さんお疲れのご様子なので就寝。私はというと、電車で寝てしまったのと生理痛と、それに加えて禅僧さんの鼾とで寝付けず、2:30まで…。

本日の歩行距離: 1km程度?
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