掬水へんろ館談話室メール
掬水へんろ館アーカイブ - 秩父徒歩巡礼記

2000/05/11 鶴水

談話室のみなさま、こんにちは。

私はGWに秩父札所を3日かけて歩いてきました。秩父も良いところでした。四国ほどのワンダーワールド感はなかったですけれど、人が爽やかで温かかったです。四国では悲しい思いをする事が多かった札所が、秩父では、最も温かさを感じられるところである事が多かったです。これはお寺の宗派の違いなんでしょうか。曹洞宗、臨済宗には、気さくに話してくださって磊落な印象のお寺さんが多かった気がします。札所の方々は親切で、次の札所までを丁寧に教えてくださったり、地図を下さいました。 秩父で唯一悲しい思いをしたのは、「南無大師遍照金剛」の真言宗のお寺でした。お四国大好き人間にとっては、残念な事でした。

GWで急に思い立った事だったため、宿が取れなくて難儀をしました。またしてもシュラフのお世話に。ヤマカガシに脅えつつ、野宿をしました。秩父は四国ほどではないけれど、山登りの人も多いためか、たくさんの野宿パッカーを見かけました。

●観音様の慈悲は生きている●
ある臨済宗建長寺派のお寺のご住職のおかげで、私は秩父でも不思議な「観音様体験」をする事ができました。こちらのご住職は、私にとっては如意輪観音の化身かと思えるほど素晴らしい方でした。今思い返しても、ありがたくて胸がいっぱいになります。文才がないため、長々と書き連ねましたが、事の次第です。

夕刻電話で軒を貸してくれと頼んだ巡礼を、ご住職は待っていてくださり、外は危ないからと畳の部屋を貸してくださいました。まだ明るかったので、掃除でもさせてくださいと申し上げると、ご住職は「そんなことはいいから休んでいなさい。近くに温泉旅館があるから、入ってきなさい」と旅館を教えてくださいました。日帰り入浴のできるところだと、行きしなに看板がたっていたこともあり、行ってみると「日帰り入浴 本日は終了いたしました」の貼り紙が。ちょっと途方に暮れて入り口で迷っていると、中から宿の方が出てきてくださって「さっきお寺から電話がありました。どうぞ」と入れてくださいました。「あっ」と思わずにはいられませんでした。ご住職がこんな事もあろうかと先回りをしてくださっていたのです。まだ2日目でしたが、四国の後遺症か既に痛み出していた膝を湯で癒しながら、感謝の気持ちでいっぱいでした。
お寺に帰り、荷物を整理していると、若住職がいらしゃって明日の道を詳しく教えてくださいました。それから30分ほどして、若住職が「住職から」とお盆を持ってきてくださいました。明日の道には数時間歩かなくては、林道なので店がないという話をしている時に、若住職がふと「メシは?」ときいてくださって、「道にコンビニがなくて」という会話をしたのです。またしても「あっ」と思わずにはいられませんでした。
それから、畳の上にシュラフをひかせていただいて眠りました。「寒かったら布団がここにあるから」とも言ってくださったのですが、あまりに申し訳ないので。座布団を一枚だけお借りしました。
ところが、そこは山の中のお寺で虫や獣が多く、なんだか体中がサワサワして怖くて眠れませんでした。多分気のせいだとは思うのですが、シュラフの中に虫がいるような気がして、体をはいまわっているような気がして、まどろんだかと思うと、すぐにびくっとして起きてしまいました。それとも巡礼だから何か悪いものでも憑いているのでは、と思うほど、サワサワという感覚が取れませんでした。12時過ぎだったでしょうか、天井から落ちてきた小石を、虫だと思って悲鳴も上げられずに飛び起きました。(もうこれは眠れない、ちょうど禅宗のお寺でもあることだ、座禅でもしよう)そう決めて、坐りました。すると不思議なもので、あれほど怖かったのが気持ちが落ち着いてきました。そして・・・坐りながらふとまどろんでしまったのでしょうか、そのときぼんやりと観音様の姿を見たような気がしました。それから、またシュラフに潜り込んだのですが、今度はさっきまでのサワサワ感も、天井裏を走りまわる音もきれいに消えていて、朝まで眠れました。
朝になり、出立の用意をしているとご住職が鐘をならすのが聞こえてきました。お勤めの邪魔をせぬよう少し待ってからもう一度本堂にお参りをさせていただきました。昨日は間違えた真言もきちんと唱え終わった後、掃除をしようとゴミを拾っていると、ご住職が「お茶でも飲みなさい」と呼んでくださいました。納経所でお茶を頂いて、少しお話をさせていただいていると、「ちょっと待っていなさい」と中に入られました。少しするとご住職が手ずから握ってくださった不格好なおにぎりをふたつ下さいます。一つはその場でいただき、もう一つはお弁当にいただきました。それから、リンゴとキャラメルを持たせてくださり、「次は遠いから、掃除なんかはいいから早く発ちなさい」と送り出してくださいました。
巡礼は、山門で深々と頭を垂れると、鳥の鳴く朝の路を下っていきました。

四国でも沢山のお接待で、お大師様の慈悲を感じて胸がいっぱいになりましたが、秩父でもこんな素晴らしいご住職にお会いしました。仏の慈悲はこうして生きてゆくのだと、涙がでる思いでした。

●一休さん人形の生まれる場所●
四国を回っていると、札所の本堂、大師堂、納経所の前に必ず、一休さん(小僧さん)の看板があるのを目にします。この一休さん人形は、実は秩父31番札所・観音院から全国の霊場へ届けられているのです。初めて知りました。秩父31番札所でお会いしたお寺のかたが、全て創られているのだそうです。
ありがたい事です。

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