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掬水へんろ館雪遍路 コウシン

《野宿》

 2月25日(金)早朝6時50分、東京浜松町バスターミナル発21時50分発の高速バス(10,000円)で徳島駅前に着く。JR坂東駅から歩き1番霊山寺に7時45分到着。山門前の店で納経帳や金剛杖などをそろえ、その後お参りをした。

 昨年お礼参りのをした時に納めた杖はあるかな、とさがしたがもうなくなっていた。納経を済ませ、2番に向かうため山門を出るところで地元の方々のお接待をいただいた。

 寒気団襲来、低気圧も接近とイヤホーンからのニュースに空を見上げた。大丈夫だろう、青い空が広がっている。愛染院に向かう旧遍路道に入る。振り向くと板野や藍住の町だろうか、家並みが眼下に広がっていた。急に歩き遍路旅の感慨に襲われ、しばしそこに佇む。

 3番4番5番と足取りも軽く進み、予定通り8番熊谷寺には5時少し前に到着。ゴメンなさいと心の中であやまって、先に納経をすませてからお参りをした。終わると5時半。今日はここで野宿のつもりでいたが、まだ空は明るい。できる限り先に進むことにした。はじめの頃は納経にこだわっていたが、納経の時間に合わせて遍路をすることは、なにかフシギな気がしてきて、そのような遍路はやめることにした。できるかぎり囚われないで歩くことがよい。

 9番法輪寺に向かう途中、本格的な歩き遍路氏に遭う。話を聞くと88番大窪寺の山門で寝たらものすごく寒かったとのこと。お互いの安全を祈って別れる。法輪寺を出る頃になると、風が強くなりだし、また寒さが急に厳しくなり始めた。寝る場所をさがしさがし歩くうちに、いつの間にか切幡寺への山道に来た。高速道路下の漆黒の闇に思わず足がすくむが、どうしようもない、進む。山門にたどり着くともうほとんど真っ暗。今日はここで終了にするほかないとあきらめる。かじかむ手でテントを組み立て、中に入り、寝袋にもぐ込んだ。懐中電灯は故障していて使えなかった。どうしようもない。

 暗闇の中で寒さに震えながら、つらつら28年前のこと、イギリスは片田舎での野宿を思い出した。このような野宿は2度目になるわけだ。やはり冬だった。農場の片隅に積み上げられたワラ山の中にもぐり込み、眠られぬ夜を東方に輝くオリオン星座を眺めながら夜を明かした。

 遠い、遠い昔のことのような、いや、ついこの間のことのような。時間とか空間とは不思議なものだ。そのようなことを考えているうちに、いつしかテントの中が明るくなっていた。

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