掬水へんろ館体験的・遍路百科談話室メール
掬水へんろ館納札 (おさめふだ・のうさつ)

納札とは

昔は、お寺にお参りした遍路は金属や木で出来た札を、山門やお堂に釘で打ちつけて行ったそうです。このことから、巡拝することを「打つ」といい、お寺を「札所」と呼ぶようになったということです。

今では、木札を打ちつけるという慣習はなくなりました。縦16〜17センチ、横5センチぐらいの「納札」(おさめふだ、または、のうさつ)と呼ぶ、紙の札を、本堂と大師堂に納めます。、千社札のように山門などに貼り付けるのではなく、本堂や大師堂での礼拝のときに、「納札箱」と表示のある箱に入れます。

納札

納札用紙は、札所や巡拝用品店で200枚100円ぐらいで販売されています。メモ用紙のように上部が糊で固めてあるものが扱い易いです。中央に「奉納四国八十八ヶ所霊場巡拝 同行二人」とあり、空欄に日付と住所・氏名などを記入するようになっています。日付以外の項目は、事前に入手できれば出発前に、そうでなければ宿でまとめて記入しておくと便利です。

本堂と大師堂の2カ所×88カ所=176枚ですから、計算上は200枚で足りることになりますが、番外の札所に巡拝したり、また後述のように他の方に差し上げたりしますので、道中少なくなったら、必要に応じて買い足して下さい。どの札所でも売っているようです。

「名刺」としての納札

札所に納めるという本来の用途のほか、お接待を頂いた際などに納札を差し上げるということが行われています。また、遍路同士で親しくなったら名刺がわりに交換するということもあります。住所の記入は、「○○県○○市」だけで済ませている方もあれば、番地や電話番号まで詳しく書いている方もあります。僕は後者で、お四国で得た縁を大事にしたいと思うので、お互い、志があれば後日お付き合いを続けることもできるわけです。

もっとも、「四国で起きたことは四国の中だけのこと」と割り切る考え方もありますから、結局は自分自身で決めることです。なお、札所の中にはこの納札の住所を利用してダイレクトメールを送ってくるところもあります。

[2001.1.28 追記]
何らかの方法で入手した納札の個人情報を利用して、「覚えておられないかもしれないが、お四国で遍路中に出会った」などと称して近づき、寸借詐欺のような行為に及ぶ例が報告されています。四国遍路の体験は、人の善意というものを信じたくなる出会いに満ちていますが、残念ながら、その善意を利用した犯罪もあるということです。親しくなった相手にわたす場合だけ詳しい番地を記入するという方法がよいかもしれません。

色のついた納札

普通の納札は白色ですが、巡拝の回を重ねると色のついた納札を使うという慣習があります。5回目からは緑、8回になると赤、25回から銀、50回から金、そして100回になると錦という織物のような生地の納札を用います。

こうした色のついた納札は、回数を重ねた方の誇りでしょう。ゲーム感覚で「経験値を積んで1ステージ上がる」という感じもします。また、金・銀や錦の納札はお守りになるとか、御利益があるとして、出会ったベテラン遍路からもらうの楽しみにしたり、札所の納札入れから集めている方もあります。

一方、「回数を誇ることに何の意味があるのか」と、ずっと白色の納札で通す方もあります。主観的意味を問うならば、本人の考え方次第ということになりますが、回数を重ねた方の功徳を分けてもらいたいと思う人々の存在も考えると、なかなか割り切れないところがあります。

錦や金・銀の納札を手に入れるために、納札入れをかき回す姿も時々見られます。これは容認されているという説もありますが、あまり美しい行為とは思えません。また、札を頂くと同時にその方の「業(ごう)」も引き継ぐことになるのだとして、納札の授受自体に疑問を呈する意見もあります。

僕は、遍路中に出会った方から間接的に金と銀の納札を頂いたことがありますが、表面には何も記入してなくて、裏面にお名前がスタンプで押してありました。この場合は、札所に納めるというよりも、他人に分け与えることの方を主眼としているように感じられます。

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