掬水へんろ館遍路日記第5期前日あとがき談話室メール
掬水へんろ館四国遍路ひとり歩き 第5期くしまひろし

第8日(8月29日) 本大温泉〜71番〜75番善通寺(善通寺市善通寺町)

早起きは10分の損

靴下を吊るして
靴下を吊るして

3時40分、起床。こんな早起きも、最終日だから無理が効くというものだ。通しで歩いていたら、こんなことをしていると体調をくずしてしまうだろう。

ローソン製の朝食をすませて4時20分出発。きのう洗濯した靴下が乾いていないのでザックの後ろに吊るしておく。まだ暗い中、懐中電灯をつけて歩き出した。2〜3分で、財田川を渡る本山橋にかかる。橋の上では金剛杖をつかない決まりなので、無意識に杖を持ち上げようとしたとき…、初めて杖がないことに気づいた。あわててホテルにかけ戻る。早く気づいてよかった。橋がなかったらどこまで歩いていたことか。特に懐中電灯で片手が塞がっているのでなかなか気づかなかったかもしれない。前回、5月に歩いたときも、朝早く、暗い内に出発して杖を宿に忘れ、1キロ近く引き返したことがあった。これまで、輪袈裟をなくしたり、色々ありながらも、鯖大師で買い換えたこの杖はここまで何とか同行を果してきた。弘法大師の身代わりとされる大切な杖だ。何とか共に結願を果たしたいものである。

暴走族(約9秒)
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4時40分、暴走族が行く。そういえば、今日は土曜日だ。『同行二人』の地図だと国道11号を一直線に行くようになっているが、現場にある四国のみちの柱はしきりと脇道へと誘う。国道より歩き易いのかなとそれに従って曲がっていくと暗い中でそれ先の道標を見つけることもできず不安になってしまう。あきらめて国道に戻る。こういうときは確実な道を行くにこしたことはない。5時を過ぎると夜明けが近い。しだいに明るくなってくる。

国道11号
国道11号

5時15分、高瀬町に入る。5時35分、高瀬警察の前の自販機で一休み。6時、聖教新聞販売所のところで国道からはずれ旧道に入る。朝から水田の鳥追テープを片づけているおじさんに合う。「お早うございます」とあいさつすると

「大窪寺までで終わり?」
「いや私は区切り打ちで、今回は今日善通寺まで行って終わりです」
「ちょっと前は暑かったけど、このごろは大分歩き易くなっていいですね」
「でも今朝は雲辺寺で降られて大変でした」
「ああそう。この辺は雨を待っているけどちっとも降らん。田んぼは水を引いてるからいいけど、畑の野菜は困っている」

ここでも水不足は深刻のようだ。

傘人形

傘をさした人形
傘をさした人形

大きな家の庭先に、傘をさした小さな子供の姿が見えたので、雨も降っていないのにどうしたのかなと近づいてみると、可愛らしい女の子の人形だった。近くで農作業をしていた男性に「あれは一体何でしょう?」と尋ねると、 「交通安全だよ」という。これをみて運転手がスピードを落とすようにと立ててあるとのことだった。

71番 弥谷寺参道
71番 弥谷寺参道

6時40分、弥谷寺(いやだにじ)入口の双石柱があった。ここから道はぐんぐん登りになる。俳句茶屋という売店から少し上がったところに仁王門があって、その先、さらに階段が延々と続いている。息を切らして登りつめて、ようやく境内が見えてきたと思ったら、階段の終わりのところに犬がうろうろしていてこちらを見て吠える。いやだなあ。毎度のことながら犬が怖い。ちょうど7時を回ったころで、まだ他に参拝客はいないようだ。仕方がない。万一のときはこちらには金剛杖という強い武器がある。

境内に入ると納経所のそばに大きな見取り図があって、本堂はさらに階段を登った先にあることが分かった。結局、仁王門から本堂まで400段もあった。9月にNHKの「ひるどき日本列島-シリーズ・ぐるり四国秋遍路」でこのお寺が映ったときは、アナウンサーと歌手の白井貴子さんがここを一気に登っていたが、荷物がないとは言え、大したものだ。

大師堂は納経所の中にある。階段を下りて先程の犬がいたあたりに戻り、靴を脱いで入る。室内には風が吹き抜けていて、なかなかローソクに火がつかず苦労した。前にお参りした人のローソクも、全部火が消えている。

竹林を行く
竹林を行く

7時45分、出発。俳句茶屋まで下りてから、竹林の中の気持ちのよい遍路道に入る。山を下りて平地に出ると、道路脇の茂みに「へんろ道」の「へ」の文字が二重になった特徴ある遍路札がいくつもさがっている。こうした札にはふつう、この札を取り付けた人の名前と日付が記されているのだが、この札には「善悪は己が取り様で逆にもなる」といった言葉のほかは「老遍路」と記名があるだけである。

8時40分、72番曼荼羅寺(まんだらじ)着。本堂は工事中のため、仮本堂にてお参りする。納経所にいたばーさんは、テレビのお笑い番組を横目で見ながら、にやにやして納経してくれた。何ともありがたく悲しいことである。こういうのは和顔施とは言わない。

灯明台

曼荼羅寺の茶店
曼荼羅寺の茶店

9時発。曼荼羅寺を出たところにある茶店でグリーンティーのお接待の貼り紙があったので一杯頂いていくことにした。抹茶を冷たくして甘くしたものである。夜明け前から歩いてきた体に糖分が心地よい。

続けて、近くの73番出釈迦寺(しゅっしゃかじ)に向かう。ここでは階段を登っていくと山門にお寺には不釣り合いなソファがおいてあるのが面白かった。「まあまあご苦労さん。どうぞ一休みして下さい」という感じである。灯明台にはしっかりしたガラスの扉にとめ金までついていて、ローソクが消えるのを防いでいる。

9時35分、出発。稲穂が重く頭を垂れる水田沿いの道を歩き、10時15分、74番甲山寺(こうやまじ)に到着。

ここは、灯明台に全くガラス戸がなく吹きさらしで、ローソクの火がすぐに消えてしまう。とうとう線香にも点火することはできなかった。一つ前の出釈迦寺の灯明台とどうしても比較してしまう。僕は特に信心から遍路をしているわけではないし、現世的な御利益を期待してるわけでもないけれど、やはり札所札所でローソクに火を灯し、線香をあげるという形式を通じてなにがしかの安らぎを得ているような気がする。お寺さんが、こんな遍路の思いを大切にしてくれているかどうかというのが、灯明台の手入れ一つにも現れているような気がする。

納経所ではなかなかの美人が一言も発せず納経してくれた。筆遣いはすごく鮮やかだった。10時40分、出発。

さすが善通寺

75番 善通寺 西院
75番 善通寺 西院
75番 善通寺 東院
75番 善通寺 東院

11時10分、75番善通寺到着。さすがにでかい。弘法大師生誕の地と伝えられるだけのことはある。ところが、仁王門を入って本堂を探したがみあたらない。納経所に行って尋ねてみると、ここは西院で、本堂は道路をはさんで向かい側の東院にあるという。なんと境内が二つもあるとは知らなかった。

東院に行ってみると、これまた広い。広々とした境内に五重の塔や大木が立ち、買物籠のおぱさんや、野菜を自転車に積んだおじさんが行き来している。まるで大きな公園だ。

JR善通寺駅
JR善通寺駅

11時40分、善通寺を出発。市内を歩いて、12時10分、JR善通寺駅着。今回これにて打ち止めである。

36,722歩、21.9キロ。

トイレで足や体を拭き、靴下を替える。白衣を脱いでT シャツに着替え、俗世間に戻る。12時48分の電車に乗り、多度津で5分待ちで乗換える。14時前に高松に着く。空港行きのバスは15時発なので、時間を持て余した。あんなに早起きしなくても良かった。琴電のビルのUCCでかき氷を食べたりして時間をつぶす。

琴電前のバス停で空港行きのバスを待っていると、僕の前に並んでいた出張帰りらしい男性が僕の菅笠や金剛杖をみて、「88カ所回られたのですか」と聞く。区切り打ちのことを説明すると、「へえ、そういうやり方もあるんですか」と感心している。バスに乗ってからも「何回目ですか」などと興味を示している。あの人もいずれ区切り打ちに出るかもしれない。

空港で、チケットを最終便の20時発から一つ前の16時25分発に変更してもらう。おみやげを買い、搭乗待合室の売店で生ビールとじゃこ天を買って一人で乾杯する。このじゃこ天はなかなか美味で、1週間ぶりのビールによく合う。

19時30分、帰着。残っていたじゃこ天でさらに乾杯した。

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