掬水へんろ館遍路日記第4期前日談話室
掬水へんろ館四国遍路ひとり歩き 第4期くしまひろし

あとがき

本文にもあるように「最近、歩き遍路が増えた」という声をたびたび耳にした。そして、歩き遍路は四国以外から来る人が多いようだ。

地元の人や、宿の人は歩き遍路をどのように受け止めているのだろうか。僕の数少ない体験からいうと、「立派な道路があるのに、何も不便な山道を歩く必要はない」と感じている方が多いように思う。「都会に住む者ほど自然へのあこがれも強い」ということかも知れない。

そう思っていたので、宇和島市内の番外霊場龍光院のお坊さんとおしゃべりしたときに、

「地元の人は、わざわざへんろ道を歩かなくても十分に自然と触れ合っているから、あえて歩き遍路をしようとは思わないのでしょう」
と言ったら、
「いや、四国の人間は、近い所でもみんな車で移動します。むしろ都会の人の方が駅の階段などで歩く量が多いのではないでしょうか」
と指摘された。なるほどと思った。では、四国の外から来る歩き遍路が多いのは何故なのか。やはり、都会人にとって四国が心地よいということなのか。だが、四国にも都市部はあり、少しぐらい四国在住の歩き遍路に出会ってもいいような気がする。依然として謎は解けない。

ところで、遍路中に出会った人には、奇妙な偶然で再会することがよくあるらしい。

通しで歩いている場合には、同じ時を共有しながら前後して歩くのだから、再会も不思議ではない。だが、今回、僕は、冬の遍路中に足摺岬で出会った、コンドウさんに再会するという経験をした。

また、去年の夏に出会ったカタネさん親子は、12月の遍路中に高知県内で出会った逆打ちのミヤモトさんと、3月の遍路中に愛媛県内で再会したという。

実際に会うまで行かなくても、その人の消息を聞くということもある。前回、僕は、1日早く歩いていたカタネさんの消息を、上記のミヤモトさんから聞いた。また、今回、アツウラさんとは岩屋寺付近ですれ違いとなったが、そのアツウラさんと出会った孝行遍路と同じ宿に泊まり合わせるという偶然もあった。

僕がこれまで出会った歩き遍路は、すべて四国の外から来て四国を歩いている(コンドウさんは自転車だが)。だが、僕にとってはみんな四国の中にいる人として感じられる。四国に行けば、また会うかも知れない人々である。

だが、会いそうで会わないこともある。5日目に出会った野宿サンとは、その翌日、44番と45番の間をお互い反対回りに歩いていたのに姿をみかけなかった。また、2日目の早朝に、観自在寺で出会ってその日1日何度も出会った夫婦遍路には、結局その後は一切出会わなかった。あまりゆっくり話をする機会もなかったので残念だ。でも、遍路を続けていれば、いつかまたどこかで出会うこともあろうか。あの奥さんの言葉通り「ご縁がありましたら」ということだが…。(98.6.20)

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