掬水へんろ館遍路日記第2期前日翌日談話室メール
掬水へんろ館四国遍路ひとり歩き 第2期くしまひろし

第6日(8月1日) 28番

薬の威力

登山用品店で買った「乾きやすいパンツ」のせいか、ゆうべまで、腰や尻に一面に大粒のアセモができていた。また歩いているときに腕にTシャツの袖が触れただけで猛烈なかゆさを感じるほどになっていた。朝、起きてみると、昨日買った薬の効き目が歴然としている。まだ、小さい点々は残っているがかゆみは全く無くなった。

また、腫れてきていた右足裏のマメの跡も熱がひいて赤みが消えている。やっぱり薬というのは大したもんだ。こういうときは西洋医学に感謝する。

6:00発。55号線に出てすぐのところに24時間営業のコンビニがあったので朝食用にパンとジュースを買い、何か正体不明の立派な休憩所で食べた。

薬も増えて、ザックが一段と重みを増したようだ。今回の荷物は合計5キロである。うち1キロは、ウェストポーチに入れている納経帳やロウソク、経本など巡拝関連と、いつもベルトに止めてあるカメラなのでザックだけだと4キロである。

ちょっとした着替えだけで済むだろうに、どうしてそんなに重くなるのか不思議である。でも、例えば、ビニールのカッパだけでも300グラムある。折り畳み傘も持っている。マメ治療用に消毒薬やテーピングテープも入れてある。トンネル内歩行や万一の夜間歩行のため、懐中電灯も持っている。こんなことであっと言う間に1キロになる。本は重いので避けねばならない。地図は、「同行二人」の本から今回歩く部分だけ切り取って持ってきた。

電池も結構重い。カメラと懐中電灯はどちらも単3電池で使えるものにして、2本だけ予備をもった。電池には色々な種類があるが、軽さと容量のどちらもリチウム電池が最高である。値段は高いけれども遍路のときは10グラムでも軽くなるなら多少の出費は厭わない。

サイクリング道
サイクリング道
6:30 歩行開始。

初日は、日和佐をでてしばらくの自販機13台の「コインスナック」に驚いたが、ここには何と17台のところがあった。上には上があるものだ。時々日のさす薄曇り。1時間ぐらい菅笠なしで歩き、アセモやマメの悩みも解消して気持ちがいい。

途中から国道55号と並行して海岸沿いを走るサイクリング道に入り、車の騒音から開放されて潮の香りのする気持ちのよいう道を歩く。ときおり、夏休み中の部活に行くのだろうか、制服姿の高校生が自転車で行き過ぎるほかは人気もない。

調査魔のお母さん

立派な休憩所があり、カタネさん親子が休憩中であった。お母さんはしきりと携帯電話をかけている。だんだん分かって来たことだが、カタネさんの奥さんは、とにかく調査魔である。本人曰く、旅行が趣味だが、ホテルや旅館など一度予約したあとでも色々なルートで情報収集して、あっさりキャンセルしたりするので旅行会社から嫌がられているとのことだ。そのカタネさんが携帯電話を駆使して調査した結果の貴重な情報を教えてくれた。

今日の宿をどこにするのかというのが、カタネさんもカワイさんも僕も共通の悩みだったのだが、JR土佐山田駅前にビジネスホテルが新しく開業したことが、土佐山田の観光案内所に電話して分かったという。28番大日寺から数キロ先である。29番に向かうにも、それほど遠回りになるわけではない。2〜3キロのプラスというところだと思われる。いつも参考にする「同行二人」の地図は大変便利なのだが、遍路コース以外の情報に目が行かなくなるという弊害がある。この地図は、遍路コースを中心に印刷されていて、ある地点が国道やJRの路線とどういう位置関係にあるのかがよく分からない場合があるのだ。僕は、「同行二人」の便利さにとらわれて、近くにあるJRの駅(→町があるかも知れない→ホテルや旅館があるかも知れない)という発想がなかったということだ。

一度 サイクリング道から国道に出て「四国のみち夜須休憩所」というところで、さっき教えてもらったダイワに電話する。「シングル、ツイン、ダブルとございますが…」と聞かれて一瞬絶句。そうだった。あちらはシャバなんだ。まさか、お遍路さんはお断りなんて言われないだろうなあなどと余計な心配をする。一昨夜の浜吉屋のおかみさんの話(「遍路を泊めると宿の格が落ちる」)というのが頭に残っていた。

10時ころから快晴となる。灼熱の太陽がじりじりと背中を焼く。 昼になったが、暑くてあまり食欲もない。とにかく国道に出て、そうめんかところてんでもないかと探すがそういう店はない。やっと見つけた定食屋「だるま」で昼食にする。カウンタに並ぶ大皿の中から好みのおかずを選ぶようになっている。「おふくろの味」といった感じの品が多い。四つ足を食べたというのが気になっていて、ここではだいこんの煮物、きんぴら、キュウリとイカの酢の物にする。イカは10本足か。まあいいだろう。真っ当な食事をしたためか、意外に元気が出てくる。

氷の別れ

かとり
かとり
13:00 旅館かとり着。食堂も併設された大きな旅館である。ここまで来れば、あと4キロで28番大日寺だ。大日寺の5時までの納経に間に合いさえすれば、ホテルには遅く着いてもかまわないので、ここでだっぷり休憩することにする。何しろ暑くてたまらず、冷房のよく効いたかとりの食堂に入っても汗が引かない。かき氷を頼んだ。

30分くらいするとカタネさんたちがやってきた。アヤコちゃんはもう歩きたくないと言うし、先を急いでも仕方がないのでここに泊まることにしたとのこと。だがまだ早すぎて部屋に入れず風呂にも入れないので食堂で一休み。奥さんが僕に「その髭はいつも伸ばしているのか」と聞くので「いや遍路のときだけ」と答えるとアヤコちゃんが「勝った!」。奥さんはいつも伸ばしている方に賭け、アヤコちゃんは「それでは会社では通用しない」と言っていたとのこと。

トイレにいって席に戻ってみると半ズボンのカワイさんが氷を食べている。カワイさんもダイワに泊まることにしたという。お互い後になり先になり出会ってきた我々だが、4人が顔を合わせたのは2日目のとくます以来だったので話がはずむ。僕とカワイさんは土佐山田まで行くので、カタネさんとはこれでお別れかも知れない。氷を食べながら、ゆっくりなごりを惜しんだ。

カタネさんが宿に入り、カワイさんが先に出発し、最初からいた僕が最後に14:30 出発。

大日寺

大日寺
第28番 大日寺
15:35 28番大日寺着。本堂は最近新築された真新しいものである。境内の地面も新しい砕石が敷かれていて、何となく落ち着かないが、とにかく暑いし後はホテルに向かうだけなので、すこし日が傾くまでベンチで休憩する。カワイさんと出会い、氷のお接待のお返しに山門の売店のジュースをお接待した。そしたらまたまたお返しに、トマトを頂いた。トマトはカリウムが豊富で疲労回復に効果があるので、時々飲料水替わりにするためにいつも生のトマトを持ち歩いているという。

16:25発。水田の中の、ほぼ一直線の道を行き、17:04、戸板島橋を渡る。

ホテルダイワ

ホテルダイワ
ホテルダイワ
17:35 土佐山田駅到着。ホテルダイワは駅の直ぐ前にあり、7月30日に開業したばかりのホヤホヤである。花輪がたくさん立ち並んでいる。ここならカードが使えるだろうとフロントでVISAを出したら、まだJCBしか使えないという。「他のカード会社の手続きが開業に間に合わなかった」と女性のフロントがひどく恐縮している。12回泊まると1回無料になるというスタンプ帳をくれた。もう2度と来ることはないと思うけど…

町に出て駅前の大通りの商店街を見て歩く。「ひじり」というしゃれたパン屋さんがあった。トレイを持っていろんなパンを自分で選ぶスタイルの店だ(これは何方式というのでしょうか。ウチでは『ポンパドールみたいな』で通じていますが)。朝食用のパンとジュースを買った。ホテルの客室の冷蔵庫はまだ空っぽなので入れておけばいいのだ。

土佐に来たのだから魚を食べようと、ホテルの近くの寿司屋で夕食にする。カウンタにすわると、目の前に煮物や揚げ物を山盛りにした大皿が並んでいる。ちょっといやな予感。「にぎりの上」と頼むとすぐ出て来たのでがっかり。これじゃ会社の近くの寿司屋のランチと同じだ。

ホテルに帰ると、入れ違いにカワイさんが外出するところである。

「夕食は?」
「今そこの寿司屋で」
「どうでした?」
「にぎり1人前頼んだら直ぐに出てきました」

という会話が今回の旅の中でカワイさんと出会った最後となった。

コインランドリーで下着だけでなくズボンも洗う。ホントはいけないのかもしれないけど、ユカタでホテルの廊下をうろついてしまった。

フロントで翌朝の為に29番への道順を教えてもらう。女性はていねいに地図を書いて道順を詳しく教えてくれた。でも自分でも説明がややこしくなったと感じたのか「言うほどむずかしくありません」と総括してくれた。何とかなるサ。

久しぶりのベッドで熟睡した。でも素泊まりで6000円は遍路宿の基準から言えば大変贅沢である。

歩数 33273、29.2キロ。カタネさんの情報のおかげで、適当な距離で1日を終えることができた。もっともご本人たちは20キロの旅館かとりでリタイアしてしまったわけだが…。

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