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掬水へんろ館四国遍路ひとり歩き 2001年夏

すいか

8月4日(土)、猛暑の中での歩き遍路初日である。平田駅を7時30分に出て、39番延光寺を打ち、宿毛に向かって国道を歩き始める頃には、日差しはすでにきつくなっていた。

松尾峠の登りにかかると、すぐに息があがる。文字通り、数十メートル歩いては休む、ということを繰り返しながら、松尾峠の大師堂再建現場にたどりついときには、12時半になっていた。ここでひと休みさせて頂いて、今朝コンビニで買ったパンで昼食とした。

あとは下り一方である。それでもじりじりと照りつける日差しにはかなわない。木陰をみつけるたびに座り込んで休み、2時過ぎには1時間近く停滞してピークをやり過ごした。

一本松町の中心街に入り、喫茶店の「氷」の文字がはためいているのをみて、ためらうことなく店に入った。注文したオレンジミルクのフラッペは、直径10センチはあろうかという特大の器にあふれんばかりに盛られ、色鮮やかなすいかの小片が載せてあった。初めにそのすいかを口に運んで噛みしめるとため息が出た。なんとおいしいのだろう。生まれてこれまでに食べた最高のすいかのような気がした。もっとすいかが食べたい。氷をやめて、このすいかだけ追加注文したいぐらいだった。でもそういうわけにはいかない。氷の山を崩壊しないようにつつきながら何とかやっつけ、グラスの水も全部飲み干して、店を出た。

ああ、でもあのすいか、おいしかったなあ。すいかをガブリと食いたいなあ。

少し元気をとりもどして道なりに進み、岡本旅館が見えてきたときには、時計の針はすでに17時だった。

宿について汗を流し、用意してあった食卓に向かったが、暑さのせいか、昼間水分をとり過ぎたせいか、食事がのどを通らない。ご飯はもちろんのこと、煮魚も天ぷらも大半を残してしまった。階下に降りて、おかみさんに「暑さのせいか余り食が進まないので、たくさん残してしまいました。どうもすいません」とあやまっておいた。

部屋に戻ってしばらくすると、トントンとノックの音がした。「これなら入るじゃろ」と入ってきたおかみさんのお盆の上には、何と、厚く切ったすいか3切れが乗っていたのだ。もちろん、かぶりついて全部平らげた。冷たく冷えていて、みずみずしく美味であった。

この日、お客は僕ひとりだった。

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