掬水へんろ館
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掬水へんろ館四国遍路ひとり歩きくしまひろし
遍路スタイル

はじまりは、1996年5月11日〜17日に、徒歩で四国遍路八十八箇所のうち阿波(徳島県)の23札所約160キロを徒歩で巡拝したことである。

僕の勤務する会社には入社20年目の「リフレッシュ休暇」という制度があり、該当する1年間の任意の時期に、5日間の連続休暇、つまり週末を入れて9日間の連続休暇をとることができる。この年の6月までにこの権利を行使する必要があった。

僕は、この休暇を海外旅行などで消費してしまうのでなく、自分の今後のライフスタイルの構成要素となるような何かに使ってみたかった。なにかの研修を受けて資格をとってみるというのが最初の思いつきだった。だが、「ケイコとマナブ」を立ち読みしてみても、一週間程度で身になるような適当なものはない。そして、なぜか、「歩いて四国遍路をしよう」と思いついた。車でさえ回ったことがなく、大体、四国と言えば、仕事で高松に行ったことがある程度である。そもそも、仏教徒というわけでもない。突飛な思いつきかも知れなかった。

書店で遍路関連の本を探したりしていたが、実行に踏み切ることができたのは、『四国八十八カ所めぐり』(日本交通公社)のおかげである。多くの本が、車で巡拝することを前提にして書かれているのに対し、この本では、歩いて巡拝するための、持物や宿のことなど実践的なノウハウが書かれていたからである。歩いている様々な人たちも紹介されていて、僕のように仏教徒でもない人間が即席で「お遍路さん」になってもかまわないんだと思えた。また、歩いて八十八箇所を回るには1ヵ月以上かかるが、何回かに分けて回る「区切り打ち」という「分割払い」みたいな方法が「公認」されていることも知った。単なる思いつきが急に現実性を帯びた。

この本に紹介されていた『四国遍路ひとり歩き同行二人』(へんろみち保存協力会)を取り寄せてみると、遍路が利用できる旅館の一覧表や、歩き遍路に適したコースの詳細な地図が掲載されていたので、疑問や不安がほとんど解消された。1週間あれば、徳島県内の23のお寺を巡ることができ、リフレッシュ休暇の使い道として実に都合がよい。

こうして、ほとんど偶発的に「歩き遍路」のサワリを実行することになった。その非日常的かつ魅力的な体験の中身については、遍路日記を読んでいただくとしよう。ともかく、この1週間のひとり旅で、僕は完璧に四国遍路というものの魅力にとりつかれてしまったのだ。もっとも、この時点では、「リフレッシュ休暇で思わぬ拾い物をした」という程度の感想をもっただけで、まだ最後まで歩き通す気持ちがかたまっていたわけではない。

たまたま、この年の初めごろ、インターネットでホームページを開設していた。ありがちな「個人ホームページ」で適当に読書日記などを掲載していた。だが、この1週間の遍路日記をホームページに掲載したことから、全国の遍路体験者・遍路志願者とのつながりができ、その後どっぷりと遍路の世界につかっていくことになった。そうして、全国の仲間達と体験を交換し、互いに励まし合いながら、3年間、6回に分けて、結局四国遍路1200キロを歩き通すことになった。その意味では、僕の歩き遍路は、ホームページによる全国の遍路仲間とのコミュニケーションとともにあったと言ってもよい。

くしまひろし

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遍路ひとり歩き:2001夏
2001年8月、39番から53番まで2年ぶりのひとり歩きをしました。

遍路ひとり歩き:2004春
2004年5月、1番から23番まで別格含めたひとり歩きをしました。


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