掬水へんろ館遍路の本談話室メール
掬水へんろ館四国遍路の寺(下)

五来重四国遍路の寺(下) (角川書店,1996年)
本体価格 2427円, ISBN4-04-511303-7

 『四国遍路の寺』の下巻は八十七番長尾寺から始まり、阿波の札所に行き、いくつかの番外霊場、弘法大師ゆかりの地に話が及び、最後は三十八番金剛福寺で締めくくられています。火を焚く、海を拝む、海が見える、辺路、行道、奥の院などをキーワードにして案内は進みますが、上巻同様に、説得力に富んだ話の内容で、奥の院へお参りすることを随所で勧めておられます。講演回数の関係だったのでしょうか、四十番観自在寺から四十三番明石寺までは項目を立てて詳しく言及されていないのが残念です。
 十二番焼山寺から慈眼寺を経て、二十番鶴林寺、二十一番太龍寺を結ぶ道が初期の辺路の道で、青年空海の修行路だそうです。これら三つの札所は空海修行の地であり、行場は険しいところにあるということを考えると、三つの札所への道が四国遍路の難所に数えられているのも頷けます。
 水が大師信仰と深く結びついていることを外国の霊場と比較しながら説いておられます。札所(例えば二十七番神峯寺、五十八番仙遊寺)や遍路道(例えば鶴林寺への登り道)で多くの湧き水に出会うことがなるほどと納得がいきます。
 歩きの遍路では、遍路道から外れたところへ行くのは抵抗が大きいのですが、時間の許す限り、この本で紹介されている辺路ゆかりの地に寄り道をすれば、充実した遍路になると思います。さらに付け加えれば、この著には海岸寺をはじめ、随所に著者の教え子のいる寺の話が出てきます。これらの寺々で教え子の方々に話を聴くことができれば、一層充実した遍路になると思います。
 評者はこの本に触発され、3回目の遍路では、昔日の遍路の気持ちが少しでも理解できたら…と思い、八十八ヶ所以外にも奥の院や辺路修行ゆかりの地も合わせて巡ろうとしています。区切り1回目では、大麻山、大山寺、高越山に登りました。大麻山の山頂(一番霊山寺の奥の院、火の見櫓のような灯台が設置してあります)では、体力作りで大麻山に登山しているという、近隣の札所近く在住の船乗りの方に出会いました。その方の話では紀淡海峡からこの灯台の灯が見えるそうです。こういう話は著者の主張を裏付けることであり、汗をかきかき登った甲斐があったと嬉しくなります。
 蛇足ですが、評者は学生の時に著者の講義(仏教か宗教学の概説だったと思います)を1回だけ聴講したことがあります。年度初めの一番最初の講義を物珍しさで聴いたのであり、その後聴くことはありませんでした。遍路に興味がある現在、碩学の著者の講義を聞いておけば…と思うと残念です。

投稿者: 北摂山系お伴の旅人

〔広 告〕
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