掬水へんろ館遍路の本談話室
掬水へんろ館現代の四国遍路

現代の四国遍路 長田攻一・坂田正顕・関三雄編現代の四国遍路 道の社会学の視点から (学文社,2003年)
本体価格 4800円, ISBN4-7620-1195-9

編者の3人が立ち上げた早稲田大学道空間研究会(後に道空間研究所)において1990年から続けられてきた四国遍路道と現代遍路文化に関する調査・研究結果をまとめた文献です。

第一部では、歴史的な経緯も含めて四国遍路文化を概括し、本書全体の研究対象を「四国遍路社会」という概念として提示しています。

第二部では、霊場会、道路の変容、移動手段の変遷、情報メディアなど、「四国遍路社会」を構成する装置について現状分析を行っています。特に霊場会の成立経緯、組織や活動など、一遍路の立場では触れることの少ない情報も記載されています。

第三部では、1996年に同研究会が行った実態調査に基づいて、遍路者の属性や意識を分析しています。現住地、年齢、性別などの基本的な属性、移動手段や区間など遍路の形態、遍路の動機や道中修行についての考え方など内面に関わる項目などの設問について、集計結果を分析するとともに、歴史的な経緯や最新の動向などとの関連において考察を深めています。

本書は、過去に同研究会が発表した『現代社会と四国遍路道』(1994年3月)、『四国遍路と遍路道に関する意識調査』(1997年10月)などに報告されている調査結果を集大成したうえで、各研究者が独自の立場から考察を加えたものと位置づけられるでしょう。

四国遍路というシステムが、交通機関や道路の発達、社会状況の変化、情報化の進展などの外的要因によって柔軟に変化を続けながら「新たな様相のもとで自らを再生産していく過程にある」(p.44)という見方は、わずか数年の四国遍路の変遷を見ているだけの僕にも納得できる解釈です。四国遍路道は決して過去の遺産ではなく、今も息づき成長する生々しい存在なのだと思わされます。

なお、第二章に「四万十川の『下田の渡し』は(中略)廃止された」(p.91)との記述がありますが、これは誤りで、2003年5月現在、運航は続けられています。

くしまひろし

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