掬水へんろ館遍路の本談話室メール
掬水へんろ館[読者投稿] 四国遍路で生まれ変る

高田真快四国遍路で生まれ変る (立風書房,1986年)
本体価格 1200円, ISBN4-651-77008-8

 子供を亡くし、出家した著者が1970年代末に四国遍路に出たときの体験記である。僧衣姿で歩く著者は、遍路途上で出会った人に加持や戒名や供養を頼まれたり、遍路の悩みの聞き役にもなったりする。また、四万十川河口では漁船に乗り合わせた時には釣った魚を漁師から食べるように勧められ、戸惑う。娘さんに言い寄られたと勘違いして慌てふためく。素人(?)遍路ではできない、僧ならではの体験が随所に出てくる。
 と同時に、サブタイトルに「霊場88ヶ所歩き方ガイド」とあるようにこの本は遍路のガイドブックにもなっている。冒頭の部分に、遍路に必要な服装や持ち物、基本的な知識などが記されてあり、文中では沿道の様子、寺の案内なども書かれている他、遍路に必要な地形図の図幅名、交通、宿泊の項もある。歩き遍路の多い現在、歩きのためのガイドは数多く出ている。しかし、歩き遍路も少なく、歩きのためのガイドもほとんどなかった当時としては、貴重なガイドである。
 この本は「今川焼きに感動してみないか」という小見出しから始まる。歩きと野宿の遍路では、何の変哲もない今川焼きにも感動を覚えるというのである。著者は旅の本質、遍路の本質をここに見ている。また、歩いて人に出会い、話をすることで自分が見えてきて、人生を考えるきっかけになり、自分も変っていくといっている。このことがタイトルの由来である。
 宿毛からの海岸沿いに行き、山を越える道や三坂峠などの山の遍路道は現地の人に状況を確かめたほうがよいとアドヴァイスをしている。当時の遍路道が通る人も少なく、荒れている様子がうかがえ、1970年代末の遍路道の状態を知る資料になっており、興味深い。へんろみち保存協力会の尽力、旧建設省、環境庁などの手で整備された、現在の遍路道とは隔世の感がある。
 文中所々に般若心経が引用されているが、最初は数小節から始まり、遍路が進むにつれて次第に引用が長くなり、結願近づくにつれ、引用は全文になっていく。少しづつ覚えて唱えることから始まり、最後に全部唱えることができるように、工夫をした引用になっているのは心憎い。
 評者は1980年代の後半に初めて遍路を体験したが、遍路を終えたあと、遍路に興味を持ち、遍路関係の本を読み始めた。その中で、この本は一番最初に読んだ遍路体験記であり、思い出深い本でもある。残念ながら現在この本は入手しにくい。

投稿者: 北摂山系お伴の旅人

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