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掬水へんろ館阿部春夫さんの実況遍路日記 《1999年3月25日》

天気:曇、気温低い、風なし、出発:金剛福寺 6時30分、到着39番 延光寺から 4.7Km ひらた荘 15時15分到着、札所39番のみ、37824歩、走行距離21.2Km、所要時間:8時間55分、お接待:1回、尺八献曲 1寺、平均時速2.6Km、体重:測定出来ず、PHSアンテナ立たず、携帯9600圏外

今日で歩くことが出来なくなると思うと、歩きに対していとおしい気持で一歩一歩噛み締めて歩き出す。人間というか生態というか適応能力は素晴らしい。ダーウインの進化論からすると毎日歩いていると100Km/日の人間に進化していくのではないか。など考えてしまう。

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しぶき
へんくつ屋

海岸通りは、波が荒く岩に砕けた波しぶきは霧のように全身に降り注ぐ、昨日の足摺岬の緑のトンネルといい今日の海と空といい、四国の自然は先進文化で傷んだ人々の心を和ませてくれるには最適な場所である。しかし、お大師様がなぜ四国の民衆に敬愛され、今日までおよんでいるのか?お大師様からの回答は未だない。

携帯電話で何時でもタクシーが呼べる。お金を出せば好きなものが何時でも買える。そのような修行ではお大師様は答えてくれないのかもしれない。お大師様の銅像から察するに「人々が恵んで下さる一握りの米で今日もいのちを長らえることができた、一椀の水で喉の渇きを癒すことができた」と感謝され、そのお姿が感謝の心の大切さを説いていったのかも知れない。でも観光遍路の私には托鉢での修行は出来ない。

曇っているせいか今日は海と空が一体になっているように見える。枝垂れ桃の花が綺麗に咲く延光寺に着いた。先ずは鐘をつき、お参りに来たことを告げ、灯明を灯し、次にお線香をあげ、開経偈、般若心経と勤行次第に従い本堂、大師堂とお参りする。人も少なかった関係もあり、大きな声でお参りすることが出来た。当初、手を合わせただけの1番さんから5番さんには申し訳なく思う。予定の39番札所まで無事に来れた事へのお大師様への感謝と、ご支援いただきました、くしま様始め多くの皆様に感謝の気持を込め尺八の献曲。なぜか竹の響きも良く二曲も献曲してしまう。

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延光寺延光寺

お昼もとうに過ぎていたので近くの食堂に入りビールとつまみと食事を注文。巡礼姿なのに昼間からビールを注文したので店のおばちゃんが怪訝な顔をする。理由を説明し、周りの人にも振る舞い酒、喜びがこみ上げてくる。

歩く苦しみからの開放か、目標達成の喜びか何だかわからないがほっとしてうれしい。今はもう歩きたくないという気持だ。事故もなく無事に巡礼できたのも、くしま様のアドバイスならびに多くの皆様のご支援によるものと感謝の気持でいっぱいです。私自身この旅では特に悟りを開いたと言うようなことは、もちろんありませんが、感謝の心だけは芽生えた気がします。ありがとうございました。

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