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巡礼の社会学
前田卓巡礼の社会学 (ミネルヴァ書房,1971年)

四国遍路関係の研究書や評論には必ずといっていいほど引用される文献です。巻頭には、古文書のほか、昭和40年代の遍路風景など興味深い写真が収録されています。 本文では、札所に残された納札などを元に、江戸時代と現代の西国巡礼や四国巡礼の巡礼者の推移や出身地、性別、職業といった属性を分析しています。本書が執筆された当時(1971年)当時の四国遍路の数は1万数千名と推定しています。

著者は、古文書などの調査だけでなく、お寺で巡礼者を待ちうけ、「数十分間、時には一時間以上もかかって、共に涙にくれながら、話を聞かせてもらう」といったことを重ねながら、巡礼の動機や目的を探ることにも力を注いでいます。

また、現代の読者にとっては、社会学的な研究成果としてだけでなく、30年前の遍路習俗を知る資料としても興味深いものがあります。例えば、当時、納経料は50円であったとか、昭和初期に「1〜6回:白、7回〜:青、10回〜:赤、20回〜:金」だった納札の色が、最近(1971当時)霊場会において「1回:白、2回〜:青、10回〜:赤、20回〜:銀、30回〜:金」と規定されたといった記述があります。(ちなみに、現在の慣行については『体験的遍路百科【納札】』を参照のこと)。そのほか、様々な接待構についても、通常のガイドブックなどより踏み込んで、実態が語られています。

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