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遍路日記 乞食行脚三百里
鍵田忠三郎遍路日記 乞食行脚三百里 (協同出版,1962年)

丸善のブックサービスで、「遍路」というキーワードで見つけた本です。

近鉄の関連会社の経営者であった著者が、四つの大病をかかえて遍路に挑戦し、見事になし遂げてさらに病気も克服してしまったという壮絶な内容の本です。当時著者は30代の終わりころであり、数十日も会社の業務を離れて遍路をするというのは大変な決意あったことと想像します。初めは歩きに徹するつもりであったが、同行者もあり、札所の間が10里(約40キロ)以上あるときは交通機関を利用したようです。それでも42日かかっています。日常は車で送迎を受け、自分では足袋をはくこともできないほど肥満だったということですが、遍路で3貫目(約11キロ)痩せたと記されています。著者は後年奈良市長を務められました。

著者の人生にも色々と興味がわいてくるのですが、とりあえず歩き遍路の区切り打ち中途の僕としては、道中記を大変面白く読みました。特に、当時は遍路を泊めてくれない宿が多かったとか、ちり紙のお接待がしばしばあったとか、現代とは随分様相の異なる遍路だったようです。また、著者は元来仏教の素養があり、「あの住職より自分の方が人間の格が上だ」とか、「あの僧の目つきはただものでない」とかいった人間観察とともに、疲労や不安で動揺する自分自身の内面の観察も赤裸々に綴られています。

ちなみに副題にある「乞食」というのは「こじき」ではなく托鉢のことで「こつじき」と読みます。

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