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88の祈り
秋元海十88の祈り (東京書籍,2004年)
ISBN4-487-79995-3

2001年11月11日、「歩き遍路をしながら現地の映像をインターネットを通じて中継」をうたい文句に1番霊山寺を出発し、12月末に予定通り結願した秋元海十さんの遍路記です。ザックは60リットル、野宿や自炊の道具のほか、デジタルビデオ、太陽電池などインターネット中継のための機材も担ぎ、重装備での出発の模様は、軽量遍路の僕としては読むだけで足元がふらつくような気がします。

最新技術の活用を目論んだ旅でしたが、実際には通信状態の問題や、歩くことに精一杯の状況のため中継そのものはあまり実現しなかったようです。当時、うまく中継を見ることができないのは、僕が夜しか同氏のホームページを開く時間がないためかと思っていましたが、本書によって、ようやくその実情をうかがい知りました。

著者が歩いた時期は、米国でのいわゆる9.11テロ事件の直後であり、「アメリカで生まれ育ちその後神戸、そしてパキスタンで幼い頃をすごした彼が、四国を歩きながら何を感じるのか」とか、ネット中継、テレビの取材など、あらかじめ様々な意味づけや話題性が予定された旅だったようです。そのため、重い荷を背負い、歩き通す中で、「ただ歩く」ということにのみ肉体と意識が集約されていくにも関わらず、取材の約束を果たすための日程に縛られて必死に先を急ぐ著者の姿は壮絶とも言えます。

巻末には、著者が豊富な体験を踏まえて勧める各種のアウトドア用品が具体的に紹介されています。

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