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佐藤亜有子 『ボディ・レンタル 』 (河出書房新社,1996年)
ISBN4-309-01109-8ボディ・レンタルというのは要するに「売春」ないしは類似の商売です。主人公の女子大生(東大のようだ)は「ボディ・レンタル」という言葉によって、肉体を単なる物体として扱うことによって、あらゆる苦痛から逃れ、自分自身の人間性を空にする快感を追い求めると称しています。が、レンタル行為の描写を通じて「空になる」ことの説得力が不足しています。主人公は「モノになりきる」といいながら本書のストーリー中では適度にサービス精神を発揮していてモノになりきっていないし、モノになりきる努力が見えません。
野獣くんをはじめその他の人々との人間関係も少しずつ中途半端な気がします。本書は私小説なのでしょうか。そうだとすると、その他の登場人物も解けてきますが…。
金を稼ぐためにモノになるというのはどこにでもある話ですが、本書としては人生そのものを、自分がモノになりきることろから見直すところに意味があると言えます。コンセプトは良いと思うので、もっと掘り下げて書き直して欲しいなというのが実感です。
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