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小川洋子 『薬指の標本 』 (新潮文庫,1998年) [新潮社,1994年]
ISBN4-10-121521-9中篇2本が収められています。
表題作の「薬指の標本」は、お客の持ち込むものを標本にして永久に保管するという「標本室」という奇妙な商売が舞台です。小説の主題は、この商売がどうこうということよりも、ここに勤めることになった主人公の女性と、風変わりな経営者との関係性にありますが、僕はこの商売の設定からすぐにプローディガン『愛のゆくえ』を想起しました。こちらはお客が自分で書いた本を何でも預かるという「図書館」が舞台設定となっており、これらの受託行為によって顧客に精神的な安定を与えるという作用が共通しているように思えたからです。何年かぶりかで「愛のゆくえ」を再読することにもなりました。フランスで映画化されることになったそうです。きっとおしゃれな作品になることでしょう。
もう一作の「六角形の小部屋」も、お客に独白のための空間を提供するという奇妙な商売が描かれています。
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