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複合汚染
有吉佐和子複合汚染 (新潮文庫,1979年) [新潮社,1975年]
ISBN4-10-113212-7

朝日新聞の連載小説に掲載された作品だそうです。僕は、新聞小説だということと題名から(そしてもちろん有吉佐和子の他の作品の物語性からみて)、企業の悪を正義感あふれる若手医師かなんかが暴いていくような、いわゆる社会派小説風の内容を想像していました。ところが、内容はまったく違っていて、そもそも小説なのかドキュメンタリーなのか分からないような読み物です。

でも、これがとにかく面白くて、食品の農薬汚染を中心に化学物質による汚染を告発するものなのですが、新聞小説を意識して1日分ずつ話題がきちんと盛り上がるように構成されているし、科学的な問題点を素人に分かりやすく、自分が納得するまで徹底的にときほぐしているところ徹底しています。その道の権威の学者に対して、「もっと分かりやすく言えませんか」と問い返す場面が何度も出てきます。

時々登場する「横丁のご隠居」とのかけ合いは、この作品の中でここだけはフィクションなんだと思いますが、息抜きを兼ねて、楽しく復習ができます。

この作品の10年以上前に書かれたレイチェル・カーソン『沈黙の春』と同類のジャンルなのに、こちらは実に楽しく読める本です。

読むのは軽快ですが内容が突きつけるものはきわめて重く、そして、昨今の食品業界のスキャンダルなどを耳にすると、この作品で指摘された輸入野菜の残留農薬の検査の問題など、多くの問題が、30年近く経過した現代においても実はまったく解決されていないのだということに気づいて愕然とせざるを得ません。

〔広 告〕
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