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「お四国さん」の快楽
横山良一「お四国さん」の快楽 (講談社,2002年)
ISBN4-06-211557-3

写真家・横山良一さんの遍路日記です。

僕は、『アサヒグラフ(1999/8)』、『太陽(2000/8)』、『Gaja(2000春)』、『Gaja(2000秋)』、『旅(2002/3)』といった雑誌の遍路特集で、何度か写真家としての横山さんの名前になじみとなりました。単に企画のスタッフとしてありふれた風景を撮影しているのではなく、歩き遍路の視点が良く伝わってくる明るいトーンの写真に好感を覚えていました。でも、単行本を買い、文章中心の作品で言葉を通して著者の思想に触れるのは初めてです。

著者は、典型的なサラリーマン生活を送ってきた僕と同年齢ですが、20代はサンフランシスコでヒッピー生活、その後世界を放浪し30歳で写真家となったそうです。遍路日記の中でも折に触れて著者の人生における体験が語られています。

1999年、チベットやバリ島での生活の中で、歩き続ける旅を主題にしたいと考えていたとき「日本に四国遍路がある」と気づいて直ちに自ら歩き遍路を実行、その後何度も四国歩きを繰り返しておられます。バリ島の人々の満ち足りた笑顔 -- あのように「笑顔の似合う人間になりたい」というのが遍路の目的の一つだったようです。著者の作品に明るさがあふれている理由が分かる気がしました。

36番青龍寺から奥の院へのほんの1キロ足らずの暗い夜道で遭難しかかるという、とても世界を放浪して来た男とは思えぬ体験もあって、お四国の不思議さをうかがわせます。

お遍路の要点は人々との出会いにあり、「出会うべき人とは、出会うべき時に、出会うべき場所で出会う。偶然なんてない。」これは、多くの遍路が抱く感慨と共通でしょう。

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